本連載は、「 エキスパートへの道しるべ(Load to Expert) 」をテーマとして、初級者がエキスパートになるためのヒントを、日本を代表するエキスパートの方々に伺う企画です。
WordPressの黎明期から活躍し、22年の実績を持つWeb開発のプロフェッショナル・たにぐちまこと氏。「ともすたチャンネル」の運営者としても知られる氏に、効果的な学習方法から最新のAIトレンドまで、貴重なお話を伺いました。

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たにぐちまことさん
22年のキャリアを持つWordPressエキスパート
――まずは、谷口さんのプロフィールについて教えていただけますでしょうか。
谷口: 株式会社エイチツーオー・スペースという会社を経営しており、現在22年目になります。業界としては古い部類に入る会社になります。元々は会社員としてWebエンジニアをしていて、独立後もWebプログラミングを続けていました。
主にウェブサイトの制作や一部システム開発を手がけています。また、「ともすた」というチャンネル名でYouTubeでの情報発信や動画教材の開発、書籍の執筆なども行っています。約18年前にWordPressと出会い、それを好きでやっていく中で、今ではほぼWordPress専業という形になっています。
WordPressエキスパートへの道のり
――WordPressのエキスパートになるまでの道のりを教えていただけますか?
谷口: 私の場合は少し変わっていて、学ぼうと思って学んだというわけではない のです。もともと自分でHTMLとCSSを使ってホームページを作っていました。
24年ほど前、ゲームクリエイターになりたい人のための入門講座みたいなホームページを運営していたのですが、そのコンテンツを管理するための方法を模索していく中で、WordPressに出会いました。当時はMovable Typeなど、いろいろなCMS製品があった時期だったのですが、のめり込むようにWordPressを1日中触り続けていたような感じでしたね。
その後、お客様にもWordPressというものをずっと啓蒙するような感じでお話をしていたら、どんどんWordPressの仕事が増えていきました。同時に自分も勉強を続けていって、マスターしたかなというところまで来ました。
――自身が大きく成長したきっかけとなるようなエピソードがあれば、教えていただけますでしょうか。
谷口: WordPressは裏でデータベースを使っているんですけど、そのデータ構造が結構独特で、正直扱いにくいんです。そのため、お客様にWordPressのカスタマイズをご依頼いただいた際に、かなり苦労させられたことがありました。
その際、元々WordPressをやる前からウェブエンジニアとしてデータベースのことやPHPのことなど、根本の部分を学習していたことが非常に役立ちました。例えば、WordPressのデータベースを解析して、別のテーブルに移して検索するという裏側の仕組みを作るといったようなことを行ったのは、自身が大きく成長したきっかけだったと思います。
初心者におすすめのWordPress学習法
――WordPressを学びたい方へ、今おすすめの学習方法を教えていただけますか?
谷口: 初学者の方には動画での学習がとても入りやすい と思います。ただ、動画は時間当たりの情報量が少ないため、入門としては最適ですが、より深い知識を得るためには、やはり文章での学習も必要かと思います。
理想的な学習ステップとしては、まず動画で入門し、次に書籍で学び、最終的に公式ドキュメントやネットのメディアに進む ことをお勧めします。
――特に見ておくべきサイトやアカウントがあれば教えて下さい。
公式ドキュメントは、開発者向けのものがとても充実しています。動画でしたら、私の作った教育コンテンツがおすすめです。
(編注: この記事の最後に、たにぐちさんがおすすめするサイトやアカウントの一覧を掲載しますので、ぜひご覧ください)
――初学者に特に心がけて欲しいことがもしあれば、教えてください。
谷口: 英語のコンテンツに怖がらずに接してほしい ということはあります。どうしても、日本語のコンテンツだけに頼ると、情報が古かったり更新されなかったりするので。
例えば、私が自分に課していることとして、Xの活用があります。情報収集のキーになりそうな英語のアカウントを何個かフォローしてリストにまとめ、最初に英語のコンテンツだけが流れてくるようにしています。
それを必ず見るようにして、新しい情報や正しい情報が得られやすい環境の構築に努めています。

WordPressエキスパートが今注目すること — 生成AI時代におけるWeb開発
――では、たにぐちさんが今注目しているトピックについて伺えますか?
谷口: そういう意味ではやはり生成AIです。 特に注目しているのは、生成AIでのプログラミング、「AI駆動プログラミング」と最近呼ばれているものです。AIによってプログラミングの学習がどう変わっていくか、プログラミングの現場がどう変わっていくかということに非常に興味があります。
これまではプログラミングを学習しようと思った場合、従来は文法を覚えて、関数やクラスなどのいわゆるAPIを覚えて、アルゴリズムを書く練習をして…という流れだったかと思います。しかし生成AIが登場したことで、これらを全部AIが肩代わりしてくれるわけです。
ただ、文法やAPIを覚える必要がなくなると、基礎が固まらない状態のまま「とりあえず動く」ものを作れてしまう。「なぜ動くのか」が曖昧なままになってしまいかねないので、そこをきちんと学ぶためには、今までとは異なるアプローチでの学習が必要になるかもしれません。
―― Webサイトを丸ごと作ってくれるようなサービスについてはいかがでしょう?
谷口: はい、bolt.new のようなサービスは特に注目していて、それらで実際にどこまで作れるかというチャレンジも行ってみているところです。今の時点では、パッと見たときに見栄えの良いものはできるのですが、レスポンシブ対応や情報の見せ方などをつぶさに見ていくと、「まだまだ完全ではない」というのが正直なところです。
生成AIについては、エンジニアの仕事が全て奪われるというよりも、マニュアル車がオートマ車になるというイメージを持っています。 マニュアル車のようなギアの操作などの面倒な部分は必要なくなりますが、ハンドルを握るといった運転のテクニックは人間にまだ委ねられています。
楽にはなるけれども、最後の仕上げの部分やコントロールする部分は人間が必要になっていくというのが、今の段階では現実的な見方だと思います。
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たにぐちまことさん
これからWordPressを学ぶ人へのメッセージ
――最後に、これからWordPressやPHPを学ぼうとする方々へメッセージをお願いします。
谷口: 2023年頃から生成AIが出てきて、プログラミング業界も大きく変わってきています。これからも新しい時代に突入していく中で、どういう情報を入手し、どんな勉強をして、どこを目指していくのかをしっかり考えながら進めていかないと、情報の波に飲まれてしまうと思います。
新しい時代に向けて、自分が何をやりたいかというところをしっかり見定めながら、情報収集に励んでいただきたいと思います。
――貴重なお話をいただき、ありがとうございました。
WordPressエキスパートがおすすめするサイト、アカウント(学習用、情報収集用)
- 動画で学ぶ場合
- ちゃんと学ぶ、WordPress テーマ開発講座https://www.udemy.com/course/wordpress_master/?referralCode=0F25EA7ADADE55D90BCE
- 書籍で学ぶ場合
- 作って学ぶ WordPress ブロックテーマhttps://www.amazon.co.jp/dp/B0BQXHN191/
- ドキュメントで学ぶ場合
- WordPress Developer Resources
- たにぐちさんのサイトなど
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