6月10日、WebKitで「WWDC25のニュース: Safari 26ベータ版のWebKit (News from WWDC25: Web Technology Coming This Fall in Safari 26 beta)」と題した記事が公開された。この記事では、今秋登場するSafari 26ベータ版に実装された67件の新機能と107件の改良点について詳しく紹介されている。
以下に、その内容を簡潔にまとめて紹介する。
1. インターフェイスとアプリ体験の進化
SVGアイコン全面対応
Safari 26ベータ版では、URLバーやタブだけでなくホーム画面やDockなどあらゆる場所でSVGファビコンが使用可能になった。無限のベクタースケーリングと小容量転送によって、サイト管理者は1枚のSVGで多解像度アイコンを賄える。加えてdata:
URLによるインラインアイコンも許可された。
iOS / iPadOS: すべてのサイトを Web アプリ化
ホーム画面に追加したアイコンは、メタタグやWeb App Manifestの有無を問わず既定でWeb App表示となる。ユーザはトグルで「ブラウザで開く」挙動へ切替えも可能。開発者にとっては従来どおりManifestやService Workerを組み込めば高度な機能を追加できる。

HDR画像サポート
Safari 26は**HDR静止画(Canvas描画を含む)**をネイティブ表示し、dynamic-range-limit
CSSプロパティでSDRとの混在制御も行える。
2. 開発者向けネイティブ統合
SwiftUI専用API ― WebView
と WebPage
struct ContentView: View {
var body: some View {
WebView(url: URL(string: "https://www.webkit.org"))
}
}
新しいWebView
は純粋なSwiftUI Viewで、スクロール位置やズーム操作をモディファイアで管理できる。高度な制御にはObservableオブジェクトWebPage
を利用し、ナビゲーション判定やカスタムダイアログをSwiftコンカレンシで実装できる。

3. visionOSにおける没入型表現
<model>
要素
USDZモデルをHTMLに直接埋め込み、ドラッグで空間配置できる。
<model src="teapot.usdz" stagemode="orbit" autoplay loop>
<img src="fallback/teapot.jpg" alt="ティーポット">
</model>
environmentmap
属性でHDRライティング、JS APIでアニメーション速度や行列操作も可能だ。
Apple Immersive Video対応
visionOS版SafariはSpatial・180°・360°・Wide FOV映像とApple Immersive Videoを曲面スクリーン上で再生し、HLSも含めて配信できる。
4. グラフィックス&パフォーマンス
WebGPU
WebGL を置き換える次世代 GPU API が macOS・iOS・iPadOS・visionOS で正式搭載。WGSL により安全かつ高速に Metal へマッピングされ、Babylon.js/Three.js/Unity など主要フレームワークが既に動作する。
// 最小構成の WebGPU 初期化例
const adapter = await navigator.gpu.requestAdapter();
const device = await adapter.requestDevice();
const context = canvas.getContext('webgpu');
WebAssembly
インプレースインタープリタ採用で初期起動が高速化された。
5. CSSの拡張
主な追加機能 | 概要 |
---|---|
Anchor Positioning | position-area やposition-try でポップアップを基準要素に簡潔配置 |
Scroll-driven Animations | animation-timeline: view() で視差・スクロール連動アニメを宣言 |
text-wrap: pretty | 段落全体のラグ右端を均す高度改行 |
contrast-color() | 背景色に応じ自動で白/黒テキストを選択 |
progress() | 進捗計算用の数学関数 |
そのほか | margin-trim: block inline 、overflow-block/inline 、絶対配置でのalign-self 等 |
Anchor Positioningのコード例:
.item-that-pops-up {
position-anchor: --profile-button;
position-area: bottom span-right;
}
6. セキュリティ & プライバシー
Digital Credentials API
const credential = await navigator.credentials.get({ mediation: "required", digital: { requests: [{ protocol: "org-iso-mdoc", data }] } });
Apple Wallet などに格納された公的な身分証をブラウザ経由で安全に提示できる。
また既知のフィンガープリンティングスクリプトに対し、ハードウェア特性APIや長期Cookieの遮断を強化。
7. Web API & JavaScript拡張
- Trusted Types、URL Pattern、File System WritableStream、WebAuthn Signalなどを実装。
- ECMAScriptではRegExpパターン修飾子と明示的リソース管理(
DisposableStack
など)をサポート。
8. 開発ツール
- Web InspectorはService Worker自動インスペクションとWorker別タイムラインを導入。
- デバッガは
await
を同期的に「ステップオーバー」でき、非同期コード解析が容易になった。
9. Web Extensions & API
Safari Web Extension Packager(Web版)でリソースをアップロードするだけでTestFlight配布用バンドルが生成可能。commands
はmacOS/iPadOSのメニューバーに表示され、ショートカスタマイズに対応する。
10. バグ修正と互換性向上
Accessibility、CSS、Media、WebRTC、Renderingなど数百件の不具合修正が行われ、Report a Website Issue…
機能でユーザから互換性レポートを直接収集できるようになった。
詳細はNews from WWDC25: WebKit in Safari 26 betaを参照していただきたい。