6月4日、OpenAI Help Centerが「Memory FAQ」と題した記事を公開した。この記事では、チャットAI「ChatGPT」がユーザーの情報をどのように記憶し、後の会話で参照するかというメモリ機能の仕組みと設定方法が詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
無料プランユーザーへの段階的な提供
OpenAIは2025年6月3日から、ログイン済みの無料プランユーザーに対しても、軽量版メモリ機能の提供を開始した。これにより、従来はPlusプランやProプランでのみ得られた会話の継続性が、無料プランでも体験できるようになった。利用者はいつでも設定画面からメモリの参照を停止でき、プライベートに会話したい場合は「一時チャット」を選択すればメモリが利用・更新されることはない。
メモリ機能の二本柱
ChatGPTのメモリは大きく「保存メモリを参照」と「チャット履歴を参照」という二つの設定で構成される。前者はユーザーが「覚えてほしい」と明示的に指示した情報──たとえば好きな料理や呼び名──を恒久的に保持する。一方、後者は過去のチャットから自動的に抽出した文脈を短期的に参照し、より自然で的確な応答を生み出す。両設定は独立してオン・オフが可能で、いつでも切り替えられる柔軟性を備える。
「保存メモリを参照」の実態
保存メモリは、いわばデジタル付箋だ。ユーザーが「私がベジタリアンであることを覚えておいて」と頼めば、その情報は常に応答の前提として考慮される。ChatGPTは保存メモリを自律的に整理し、冗長になった情報をまとめたり更新したりできる。不要になったメモリは、チャット内で「忘れて」と指示するか、設定 → パーソナライズ → メモリを管理 で個別削除・一括削除が可能だ。ただし設定で参照をオフにしても、保存済みメモリ自体は残るため、完全に消去したい場合は明示的な削除が必要になる。
保存期間とストレージ管理
保存メモリはチャット履歴とは別の領域に格納される。したがって、過去チャットを削除してもメモリには残り続ける。ユーザーが削除を依頼すると、そのメモリは直ちに参照対象から外れ、最長30日以内にシステムから完全に消去される。保存領域には上限があり、満杯になると新たなメモリは保存されない。容量の状況は「メモリを管理」で確認でき、不要なメモリを削除すれば空きが回復する。
「チャット履歴を参照」の役割
この設定を有効にすると、ChatGPTは過去の会話を参照して、ユーザーの趣味や傾向を推測し、次のチャットに生かす。たとえば以前に「タイ料理が好き」と話したことがあれば、昼食を尋ねた際に候補としてタイ料理を示す可能性が高まる。保存メモリと異なり、保持内容はモデルが動的に書き換えるため、時とともに入れ替わる。設定をオフにすれば、30日以内に抽出済み情報は削除される。また「保存メモリを参照」をオフにするとチャット履歴の参照も同時に無効化されるが、その逆は許容される。
プライバシーとモデル改善
OpenAIは健康情報などのセンシティブデータを自動記憶しないようモデルを訓練している。さらに「モデルの品質向上に協力」がオフであれば、メモリを含む会話内容がモデル学習に利用されることはない。オンにしている場合でも、企業向けのTeam、Enterprise、Eduプランのデータはデフォルトで学習対象外だ。
企業・教育機関での制御
ChatGPT EnterpriseおよびEduの管理者は、管理コンソールからワークスペース全体のメモリ機能を一括で有効化・無効化できる。2025年2月18日以降、これらのプランではメモリ容量が従来比で20%拡張されており、大規模組織でも余裕を持って利用可能となった。
メモリ機能を適切に設定すれば、ChatGPTはユーザー固有の文脈を理解し、より精度の高いパーソナルアシスタントへと進化する。一方で、どの情報を残し、どの情報を忘れさせるかは常に利用者が主導で管理できる点も強調されている。詳細はMemory FAQ OpenAI Help Centerを参照していただきたい。