3月29日、海外のテクノロジーメディアAIMが「Why Companies Are Moving Away from Next.js」と題した記事を公開した。この記事では、企業がNext.jsから離れつつあるという実情とその背景について紹介されている。
以下に、その内容を紹介する。
Next.jsに対する不満の高まり
最近、複数の企業がNext.jsに関する問題を発表している(例: Northflank公式ブログの記事)。特に、フレームワークの脆弱性を悪用される事例(例:CVE-2025-29927)や深刻なパフォーマンス低下に直面する企業が増えているようだ。長年にわたり、Next.jsはReact開発者にとって有力な選択肢だったが、いまやその地位を再考すべき段階に来ているという声がある。
パフォーマンスとSEOのギャップ
Next.jsは静的サイト生成(SSG)やサーバーサイドレンダリング(SSR)、さまざまな最適化を提供する“オールインワン”フレームワークだと称している。しかし、実際には大規模な環境で運用する際にボトルネックが発生しているとの報告が相次いでいる。
Northflankでは、数十億規模のリクエストを処理する中で、マーケティング用の比較的単純なサイトであってもNext.jsに起因するパフォーマンスの問題を経験したようだ。同社は改善策を講じたものの、原因がNext.jsそのものにあると判断し、カスタムのReact SSRソリューションを作成したところ、表示速度が飛躍的に向上したと報告している。
たとえば、最初のコンテンツ描画が4倍速くなったうえ、Speed Indexも8.4秒から1.7秒へ短縮。さらに、CDNを導入しても解消できなかった遅延問題が改善されたという。Googleクローラーが複数ページを同時に巡回するケースでは、Next.js利用時にサイトがクラッシュする事態が何度も発生していた。SEO強化を狙って導入したはずのSSRが、読み込み速度の遅さゆえに逆に検索ランキングで不利になってしまい、実際に検索順位が下落したケースもあった。
ガバナンスと進化の方向性
Next.jsはVercelの管理下にあり、そのためにフレームワークの進化やサポートに制限がかかっているのではないかという指摘もある。NetlifyのプリンシパルエンジニアであるEduardo Bouçasは、Next.jsにおけるセキュリティ管理の不十分さや、特定のホスティングサービスを優先しがちな設計姿勢を問題視しているようだ。
当初はJamstackや静的サイト生成を前面に押し出していたにもかかわらず、サーバーレスやサーバーサイドレンダリングへのシフトを続け、最近では再びマイクロVMに焦点を移している。これにより、開発者は次々と方針転換を強いられ、アプリケーションのリファクタリングに追われているという声も多い。
開発体験の悪化とベンダーロックインへの懸念
開発体験(DX)の面でも課題が浮上している。小規模なプロジェクトでもホットモジュールリローディングに6~7秒かかるという報告があり、高性能なマシンでも開発効率が著しく低下しているという。また、自己ホスティングを試みる際にVercelの運用環境を強く意識した作りになっているため、不要なトラブルに直面しやすいという意見もある。
一部では、Next.jsのプロジェクト運用を通してVercelのプラットフォームに誘導するような仕組みが見え隠れしているとの声もあり、ベンダーロックインを懸念する開発者が増えている。セキュリティ上の脆弱性が判明した際、Vercelのホスティング上でのみ先行して修正が施され、一般には公開されていなかったケースがあるとの指摘もある。
それでも残るNext.jsの利点
Next.jsに対する批判の一方で、フロントエンドとバックエンドを同一のプロジェクトで扱える利点を評価する声も残っている。ルーティングやAPIルートの設定、TypeScriptサポートの利便性から、フルスタック開発を効率化できる面も確かにある。ただ、パフォーマンス面やプロジェクトの長期維持を重要視する企業・開発者にとっては、他の選択肢が魅力的に映っているようだ。
結局のところ、Next.jsはReactエコシステムに深く根ざした“便利なツール”として活用される半面、大規模かつ安定性を求める企業にとってはデメリットが際立ち始めているという状況だといえる。
詳細はWhy Companies Are Moving Away from Next.jsを参照していただきたい。