2月17日、The New Stack が「Vim After Bram: A Core Maintainer on How They’ve Kept It Going」と題した記事を公開した。この記事では、オープンソーステキストエディタ Vim のメインメンテナーであった Bram Moolenaar 氏の死後、どのようにプロジェクトが存続・運営されているかについて詳しく紹介されている。
以下に、その内容を紹介する。
記事では、まず Bram Moolenaar 氏が 2023 年 8 月に亡くなった後、Vim の開発がどのように継続されてきたのかについて語られている。Vim のコアメンテナーである Christian Brabandt 氏は、VimConf 2024(東京)で当時の状況を報告し、 「開発は止まっていない」という事実を強調した。 コミュニティからのプルリクエストやIssueが GitHub 上で日々活発にやり取りされており、 2024 年 1 月には Vim 9.1 がリリースされた という。
また、Brabandt 氏が中心となって進めてきた一連の対応についてまとめると以下のようになる。
- Moolenaar 氏は Vim 30 年の歴史を支えてきたリーダーであり、オリジナルの設計思想や機能の詳細を把握していたため、 その死は大きな知識的損失となった。
- GitHub 上の権限移譲では、Moolenaar 氏のアカウントが所有者の状態になっていたが、 遺族の協力によりメンテナーへの権限付与が可能になった。
さらに、Vim プロジェクトを取り巻くインフラの移行や問題、そしてそれらにどう対処したかも述べられている。
- 脆弱性報告を受け付けていたサイトが AI 企業に買収され、従来の OSS レポート機能がすぐに停止 された。代替として GitHub Security Advisory を利用することにした。
- Vim の公式ホームページの基盤が 20 年以上ほぼ更新されておらず、PHP 7 サポート終了後も古いコードのままだった。 加えてホスティング先が買収され、サポートに応じてもらえない状況となったため、別のホスティング移行と PHP 8 対応を急遽進めた。
- FTP サーバーを引き続き利用していた が、現在は多くのユーザーが GitHub やホームページからダウンロードするため、FTP を段階的に廃止することにした。
- ドキュメントに記載されていた連絡先が Moolenaar 氏の旧メールアドレスに転送されるままになっていた ため、2024 年末に Brabandt 氏のアドレスへ切り替えた。
現在の Vim はメンテナンスモードに近い状態だが、 Vim 9.2 では XDG Base Directory 対応や Wayland サポート強化など、コミュニティが要望してきたいくつかの改善が検討されている。 大規模な機能拡張(例:Neovim のような Tree-sitter 統合)をすぐに行うのは困難ではあるものの、コミュニティによる新規コントリビュートを歓迎する方針が示されている。特に Brabandt 氏は新規参加者に対して、小さな機能修正やバグ修正から始めることを推奨している。
また実際の開発においては、引き続きC言語による堅牢なコーディングを継続しながら、毎日のコード解析とテストスイートを活用しているという。Brabandt 氏は、すべてを Rust のような最新のプログラミング言語にリファクタリングすることは、現時点では選択肢ではないと述べている。
Python 2 用インターフェイスなど、一部のレガシー機能は「将来的に整理が必要」とする一方で、Vim の後方互換性は大きく維持される見通しであり、今後は「内部プロセスの文書化」にも注力する方針とのことだ。
最後に Brabandt 氏は、「Vim はオープンソースプロジェクトであり、 コミュニティが支えることで未来へ進める 」と強調している。実際、コミュニティ主催の VimConf が存在し続けていることは、依然として Vim が活発に息づいている証拠と言えるだろう。
詳細はVim After Bram: A Core Maintainer on How They’ve Kept It Goingを参照していただきたい。