1月21日、MIT Technology Reviewが「The second wave of AI coding is here」と題した記事を公開した。この記事では、生成AIを活用したコーディング支援の新時代と、ソフトウェア開発プロセスの変革について詳しく紹介されている。
以下に、その内容を簡潔に紹介する。詳細は原文を参照していただきたい。
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記事によると、近年の大規模言語モデル(LLM)を利用したAIアシスタントは、コーディングの補完やコード修正といった領域で大きく進化してきた。たとえば、OpenAIの技術をベースとしたGitHubのCopilotは、既に世界中の何百万人もの開発者に利用されているという。さらにAnthropicのClaude、OpenAIのChatGPT、Google DeepMindのGeminiなど、より汎用的なチャットボットも開発者にとって日常的なサポート役になりつつあるようだ。
すでに大手テック企業ではソフトウェアの一部をAIに生成させ、その後エンジニアがレビューして最終的に採用するといった手法が取り入れられている。Alphabet(Google)のCEOサンダー・ピチャイ氏は、2024年第3四半期の決算報告で「新規コードの4分の1以上がAIによって生成されている」と述べたが、同様の動きは他の企業でも加速する可能性が高いとされる。
一方、大手だけでなく、ZencoderやMerly、Cosine、Tessl、Poolsideといった新興企業も次世代のAIコーディングツールを開発している。従来の「入力を補完する」機能から、プロトタイプの生成やテスト、バグ修正まで一連の工程を自動化できる水準を目指しているという。これにより、エンジニアの役割はコードを書くだけでなく、機械が生成したものをレビューしたり、課題設定や意図を明確化する管理者的なポジションへと変わりつつある。
こうした動向の背景には、人間のコーディングプロセスそのものをAIに模倣させることで、単に構文的に正しいコードではなく、意図した機能を正しく果たすコードを生み出そうとする 狙いがあるといえる。
CosineやPoolsideなどは、単に大量の完成コードを学習させるのではなく、コードが組み上げられていく過程や、エラーの発見・修正の試行錯誤を含む「思考経路」のデータ化を進めている。その一つの手法として、AlphaZeroのように自らコードを試行しながら最適解を探す「RLCE(Reinforcement Learning from Code Execution)」が活用されている点が注目される。
しかし、Merlyのように、大規模言語モデルの根底にある統計的な生成手法ではコードの厳密な論理性を担保しきれないとして、あえてヒトが書いたコードを学習させないアプローチを取る企業もある。いずれにせよ、コード量が飛躍的に増加していく将来において、AIによる開発支援の需要はさらに高まると見込まれている。
Cosineは自社の開発組織で従来のツールを禁止し、独自のAIコーディング支援「Genie」だけを使う実験を行っているという。結果として、エンジニアの作業は複数のタスクを同時並行で進めながら、モデルが自動生成するコードの精査やデバッグの承認プロセスに時間を割くスタイルに移行しているとされる。こうした事例は、企業内でエンジニアの人数を増やすのではなく、高度なAIツールで生産性を引き上げる動きが加速する兆しを示している。
最終的には、ソフトウェアエンジニアの仕事が「コードを書く」作業から「AIが生成したプログラムを管理・監督する」領域へとシフトする可能性が高い とされる。これは決してエンジニアの創造性を奪うわけではなく、むしろエンジニアが考えるべき課題設定や要件の定義により多くのリソースを割く方向へ進んでいるという見方もある。
記事では、こうしたAIコーディング技術の進化が、単に生産性や開発手法を変革するだけでなく、人工汎用知能(AGI)への道のりにもつながり得るという議論も紹介されている。多くの企業がAIコーディングを「限定的な応用」ではなく「より高度な推論能力」の基盤として捉え始めており、ソフトウェア開発から生まれるデータや検証サイクルが、人間に近い問題解決能力を持つAI実現の手掛かりになるのではないかと期待が高まっているようだ。
詳細はThe second wave of AI coding is hereを参照していただきたい。