7月8日、Jack Kelly氏が「Firefoxに資金提供できないのでLadybirdに資金提供している(I'm Funding Ladybird Because I Can't Fund Firefox)」と題したブログを公開した。この記事では、先日話題になったLadybirdブラウザを支援することを表明し、現在のブラウザ業界の問題点について語っており、海外で話題になっている。
ブラウザの多様性が重要な理由
オープンなウェブには、複数の競合するブラウザが存在し、どのベンダーもウェブ標準を事実上支配できない、という健全なエコシステムが必要である。
1990年代から2000年代にかけて、MicrosoftのInternet Explorerの支配をFirefoxが打破したときには、それまで「IE6用」に行われていたWeb開発が、「ウェブ標準向けの開発」に進化した。
しかし現在、GoogleのChromeが65%以上の市場シェアを持ち、Edgeを加えると70%以上に達する。残念ながら、ウェブはまたもや単一のベンダーに支配されてしまった。この市場支配により、Googleは広告ブロッカーを無力化する「Manifest V3」形式など、ユーザーに不利な変更を推進できるようになっている。
なぜMozillaはFirefoxの資金提供を許さないのか?
Jack Kelly氏はオープンなウェブを推進すべく、Chromeの競合となるブラウザを支援したいのだが、Mozilla Firefoxはそうした支援を受け付けていないという。
Mozilla Foundationの寄付FAQによれば、「Firefoxは主に検索パートナーシップによって収益を上げているが、その収益は主に法人に再投資される」という。ここでいう「検索パートナーシップ」とはGoogleのことだ。つまり、Firefoxの主要な収益源は競争相手であるGoogleから来ている。Googleの市場支配を変える力は、Firefoxにはないと言って良い。
そしてMozillaは収益を確保するために、近年いくつかの物議を醸す施策を行ってきた。その一例として、ユーザーの許可なしに「Mr. Robot」アドオンをインストールしたことが挙げられる。これはTVショーの広告を目的としたもので、多くのユーザーから批判を浴びた。また、アドレスバーや新しいタブページにスポンサーリンクを表示する施策も行っている。
さらに、Mozillaは「Pocket」というブックマークサービスをFirefoxに統合し、Mozilla VPNサービスの広告をブラウザ内で表示するなどの営利活動に邁進している。このような施策は、多くのユーザーが広告やクロスプロモーションを嫌ってFirefoxを選んでいる中で、ユーザーの信頼を損なう結果となっている。
著者がLadybirdを支援する理由
この記事の著者であるJack Kelly氏は、長年にわたって真剣な代替ブラウザを支援したいと考えていたが、Mozillaはその機会を提供しなかった。そのため、MozillaではなくLadybirdを支援することを決めたのだという。
Ladybirdブラウザは、元々Andreas Kling氏が開発したSerenityOSという趣味のオペレーティングシステムのためのウェブブラウザとしてスタートした。
2024年6月3日にKling氏はLadybirdを独立したプロジェクトとして分岐させ、SerenityOSから離れてLadybird Browser Initiativeを立ち上げた。この非営利団体は、完全なウェブブラウザの構築を目指している。
Ladybirdは現在も開発中であり、最初のアルファリリースは2026年を予定している。しかし、既に稼働するコードがあり、ユーザーは実際に資金提供を通じて開発を支援することができる。月額15 USD(約22.50 AUD)の支援が推奨されている。
Kelly氏は、ウェブブラウザの多様性と健全な競争が重要であると考えており、Chromeの市場支配に対抗するために、ユーザーが支援できるオープンなブラウザが必要だと述べている。彼は、Ladybirdがその役割を果たすことを期待している。
詳細はI'm Funding Ladybird Because I Can't Fund Firefoxを参照していただきたい。
"この記事では、先日話題になったLadybirdブラウザを支援することを表明し、現在のブラウザ業界の問題点について語っており、海外で話題になっている。"