7月26日、日本初のIonic Developer ExpertsとしてTechFeed公認エキスパートの@rdlaboさんこと榊原昌彦氏が認定されました。おめでとうございます🎉
ということで今回の「Ask the Expert」では榊原さんに、国内ではややニッチなフレームワークとして見られることが多いIonicの魅力や、Ionic Develper Expertsとしての抱負についてうかがってみました。
今回話を伺ったエキスパート
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まず、Ionicとはそもそも何でしょうか?概要を教えてください。
とてもざっくり言ってしまうと「Web技術でモバイルアプリをつくって配信するための技術」です。以前、Ionicのキャッチコピーで
あなたがWebサイトをつくることができるなら、もうモバイルアプリもつくれます!
と出ていたんですが、まさにIonicはそのための技術ですね。
今回はIonic teamが開発してるライブラリの中でも最も特徴的な「Ionic Framework」と「Capacitor」を紹介します。
ではIonic Frameworkから紹介をお願いします。
まず、Ionic Frameworkとは「モバイルアプリのデザインをWeb技術で再現するためのUIフレームワーク」です。わかりやすくいうとBootstrapみたいなもので、iOS / Androidの両方のデザインが用意されていて、実行環境で自動的に切り替わるようになっています。
注意深くモバイルアプリのUIを見てもらうと、WebのUIデザイン文化と異なることに気づくと思います。たとえば、日付選択だとカレンダーピッカーが一般的ですが、モバイルアプリだとホイールピッカーも多く採用されます。けどこれってパソコンからだととても使いにくいんですよね。あと実装がやたらに面倒(笑)
ほかにも、下に引っ張ってコンテンツを更新するリフレッシャーや、通知を表示するためのToastなど、そういったコンポーネントがIonic Frameworkには揃っています。
そして、このコンポーネントを積み木みたいに組み合わせていくと、モバイルアプリのUIがWebアプリとして完成します。たとえばこれ(下図)はずいぶん前にデモ用に作成したのですが、こういう感じのアプリを簡単につくることができます。
コンポーネントの組み合わせしだいで、モバイルのUIが簡単にWeb上で実現できるのがイイですね!
そう、せっかくUIや操作性はモバイルアプリなので、今度はモバイルアプリとしてApp StoreやGoogle Playで配信したくなりますよね。そういう人のために「Capacitor」という、アプリに配信するためにWebアプリをモバイルアプリの形式に変換するライブラリもあって、これらを使うことでWeb制作者はすでに持っている技術スタックをベースにしてモバイルアプリをつくることができます。
榊原さんが認定された「Ionic Developer Expert」とは何でしょうか? 概要を教えてください。
「Ionicを使った開発について専門的な知識を有している、素晴らしいコミュニティメンバー」「オフィシャルに認められるチャンピオンプログラム」だと、今みたらWebサイトに掲載されていました(笑)
The Ionic Developer Experts program is a developer-focused champions program meant to provide amazing community members with formal recognition as experts in our technologies, as well as a host of other benefits.
このプログラムはIonic Conference 2022で発表されたもので、ここに挙げられている特典を受け取ることができます。特別なグッズも送られてくるらしいですw
ただ始まったばかりのプログラムなので、「こんなことができます!」というより、Ionic teamとエキスパート認定された開発者で「こうしたい」「こんなことはできないか」と議論しながら今後成長していくプログラムになるかなと思っています。
Ionic Developer Expertに就任されたきっかけ、流れを教えてください。
このプログラムが発表されたカンファレンス(Ionic Conference 2022)を視聴してたから…というのは置いといて、Ionicの開発において英語圏以外の対応についてより声をあげやすいポジションを得ることを期待してですね。
たとえばカレンダーの表記って、英語圏だと「Month - Year」じゃないですか。日本をはじめとしたアジア圏だと「Year - Month」ですが、Ionic 6リリース直後って「Year - Month」の表記はサポートされてなかったんですよね(現在はサポート済み)。
こういったことってあたりまえですが、声をあげる人がいないと対応されないのですが、より言いやすいポジションがあると嬉しいな…と思ってたところ、Ionic teamのメンバーと直接ディスカッションできるプログラムが始まったので申し込み、認定されました。
あと、Ionicを使った開発の技術サポートのお仕事もしているので、箔付けもあると嬉しいなというのもありながら(笑)。
(Ionic Developer Expertへの)申し込み自体はとても簡単でサイトから自己推薦を送る形です。その後、
- Ionic teamの審査
- 審査が通ったら、早期プログラムに参加するためのNDA契約を締結
- Ionic Developer Expertsが参加するDiscordのチャンネルに招待など
という流れでした。今後、Ionic Developer Expertsの紹介サイトとかもつくるという話がでてたので、それが進めば今後はプロフィール写真を送るなどの手続きも増えるかもしれないですね。
Ionicについての現状の課題があれば教えてください。
もうIonic 6までバージョンが進み、ある程度は成熟したのでライブラリに対する課題はとくに感じていないですね。どちらかというと、日本で知名度が低いことぐらいで、実はそれが一番クリティカルな感じはしています。
今回、この記事を紹介してもらうTechFeedさんもIonicを採用していますし、有名ところでは、三井住友銀行やiAEONのアプリもIonicが使われています。
みんな大好き「The State of JS」でも、モバイル&デスクトップの満足度でCapacitorは80%を越えてて上位にいます。でも、なぜかニッチな技術扱いされることが多いんですよね。ドキュメンテーションも日本語で読めるので、ぜひこの記事を読んだ方は一度手を動かしてさわってもらえたら嬉しいなって思ってます。
Ionicについての今後の(明るい)展望を教えてください。
Web制作の敷居が年々下がっていることでしょうか。高校の情報の授業でもHTMLはやりますし、ドットインストールさんやさまざまなWebサービスで学習するのはとても簡単になりました。Web制作を覚えるのって昔に比べたらとても始めやすくなったと思うんですよね。かわりに、学んでも学んでもキリがないぐらい毎年新しい仕様や知識もでてきていますが(笑)
学ぶニーズも高まり続けている。「脱サラしてWebフリーランス」「在宅スキマ時間で月収○万円」とか聞くと、個人的には期待値高止まりしすぎじゃないかなとも思いますが、それだけWebの世界が愛され続けてるのがIonicについての明るい展望になるんじゃないかなと思っています。
Ionicって結局のところ、ただのWebなんです。なので、Web制作者が増えて裾野が広がるほどに、「あれをつくりたい」「こんなのほしい」というのが増えてくる。それを実現するための選択肢の何割かにIonicがあがる未来であってほしいなと思っています。