離島で自動運転の実証実験 愛知県など 観光型MaaS
三河湾に浮かぶ愛知県南知多町の日間賀(ひまか)島で25~27日、自動運転のバスを公道で走らせる実験が行われた。県や名古屋鉄道、NTTドコモなど産官学の事業で、顔認証システムによる乗降や、国内初の車内転倒防止支援技術などを組み合わせた。県は「離島観光や住民の生活支援につなげたい」と話す。
埼玉工業大が所有する専用のマイクロバスを使った今回の実験の公道コースは約3.6キロメートル。車両のコンピューターにあらかじめ登録されたコースを低速で走った。
運転席にドライバーが座って監視するなか、バスは対向車や自転車、人を検知すると自動で速度を落とす。乗車した観光客の吉川敬俊さん(39)は「非常にスムーズで驚いた」と語った。
バスの乗降口には顔認証システムを搭載。直前に登録した乗客の顔と名前の情報を認識し、吉川さんらは"顔パス"で利用できる未来のシーンを一足早く体験した。
アイシン精機などが開発中の車内転倒防止の支援技術も搭載された。バスに乗り込む際の動作などから転倒のリスクが高そうな人を見分け、ゆっくり発進したり、その人が着席するまで発進しないシステムを目指しているという。
名古屋駅から名鉄特急と名鉄海上観光船で約1時間半。全域が国定公園に指定されている日間賀島は名古屋から一番近い島で、名鉄グループは「タコとフグの島」を掲げた観光PRを展開する。
今回の実験は、次世代の移動サービス「観光型MaaS(マース)」の環境整備も目的だった。名鉄グループは、スマートフォン向けのQRコードを提供。日間賀島への鉄道、定期船の乗り継ぎ情報や島内の自動運転バスの運行時間、シェアサイクルの利用方法などを一括で検索できるサービスを行った。
17年、日間賀島へ医薬品をドローン(無人飛行機)で配送する民間主体の実験があった。県は住民の生活支援に向けた取り組みも進めている。ドローンの活用などを視野に入れ、新たな離島の活性化モデルを構築したい考えだ。
一方、自動運転の実用化に向け、県は全国に先駆けて16年度から実験を重ねている。「製造業が集積する愛知の強みを生かす」(大村秀章知事)のが狙いで、今後の官民の試みが注目される。(林咲希)