中国・武漢で感染が相次ぐ新型肺炎だが、他都市の危機感はまだ薄い。
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中国・武漢から日本、タイにも飛び火した新型コロナウイルス関連肺炎。この1週間、中国では新たな患者が確認されない一方で、日本で1人、タイでは2人の発症が判明したことから、中国のSNSでは「新型肺炎のウイルスは、海外にしか出て行かない“愛国ウイルス”」との言説も急増している。
だが、1月18日になって武漢市衛生当局が4人の患者増加を公表。国民の大移動が始まる春節を目前に、収束モードに暗雲が立ち込めている。
中国で武漢以外に拡大しない不自然さ
新型コロナウイルスに感染した人は海外に出るから、中国は安全だとの投稿も。
日本では1月16日に、武漢から帰国した男性の新型コロナウイルス感染が明らかになり、一気に不安が高まったが、中国では11日の「41人が新型肺炎を発症」という発表を最後に、患者は増えていなかった。
武漢市当局は毎日、公式サイトで「新規増加なし」と情報を更新、2人の死者が出たものの、多くが治癒に向かっていると強調し、収束モードが漂っていた。一方、今週になってタイと日本で武漢からの入国者の感染が分かり、ネットではこの奇妙な状況への反応が少なからず出ている。
17日からSNSのウェイボ(微博、Weibo)で目立ち始めたのが、「新型肺炎のコロナウイルスは、愛国ウイルスだ」といった言説だ。同日午後、タイで2人目の感染が確認されると、「このウイルスは愛国なので、武漢から他の都市には広がらず、海外に出国する」「ウイルスに感染した人を国外に出す」などの投稿が拡散するようになった。
中国のSNSが政府によって監視され、情報規制が敷かれているのは周知の事実。この投稿には冗談だけでなく、「海外で患者が出ているのに、中国では武漢に患者が封じ込められている」不自然さへの疑問も含まれているとみられる。
情報がたくさんあるが、政府は本当のことを隠さないでほしい、と書かれた投稿。
海外SNSでは家族が新型肺炎に感染したことを訴えるウェイボの投稿がアカウントごと削除されたとの情報も拡散しており、中国のSNSでも多くはないが、「政府は本当の状況を公開してほしい」という声が挙がっている。
1週間ぶりに患者4人増加で再び警戒感
武漢市の衛生当局は18日、新たに4人の患者が確認されたと公表した。
武漢市当局公式サイト
新型肺炎の感染の強さに対しては、さまざまな投稿が交錯する。
「重症化しにくいから、心配することはない」という呼びかけがあれば、「マスクはしよう」「武漢には行かない方がいい」との投稿もあり、「人から人への感染」への懸念が広がりつつある。
そんな中、18日になって武漢市の衛生当局は新たに4人の患者が確認されたことを発表。41人で止まっていた累計患者数は45人に増えた。
当局はパニックを避けるため、4人とも5~8日に発症し、8日から13日にかけて入院、現在は快方に向かっていると説明しているが、メディアは18日朝から患者の増加を一斉に報道。17年前に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)とコロナウイルスの類似性が海外の研究者から相次いで指摘されていることを受け、SARSの病原体となったコウモリが今回も関わっているのではという疑いに、再び関心が集まっている。
(文・浦上早苗)