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Xilinx 自動車ビジネス事業部 上席部長 ウィラード・トゥ氏に聞く、Xilinxの自動車向け事業

中国 Baiduが自動バレーパーキング向けのSoCにXilinx採用

2020年1月15日~17日 開催

7nmで製造されるVersal ACAPを搭載した開発ボード

 半導体メーカーのXilinx(ザイリンクス)は、FPGA(Field Programmable Gate Array)と呼ばれるソフトウェアで定義が可能なプログラマブルな論理回路のトップベンダーとして知られている。FPGAは元々は論理回路の試作などに使われていたのだが、近年はそれ自体を演算に利用する、そういう使われ方が一般的になりつつある。特に自動車への応用例も増えており、2019年にXilinxが米国サンノゼで開催した年次イベント「XDF(Xilinx Developer Forum)」では、日本の日立オートモティブシステムズが同社の次世代ADAS製品にXilinxの「Versal ACAP」(バーサル・エーシーエーピー)をマシンラーニングを、利用した画像認識のエンジンとして採用することを明らかにした(別記事参照)。

 そうしたXilinxの自動車ビジネスを率いるXilinx 自動車ビジネス事業部 上席部長 ウィラード・トゥ氏は、1月15日~17日の3日間に渡り、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催された「第12回 オートモーティブ ワールド」の会場においてインタビューに応じ、XDF以降に明らかになった同社の自動車分野での取り組みと成果について説明した。

Seeing Machinesのドライバー・モニタリング・システムのデモを展示

Xilinx 自動車ビジネス事業部 上席部長 ウィラード・トゥ氏

 Xilinxは、2019年10月に米国サンノゼで開催されたXDFにおいて、「Vitis(バイティス)」と呼ばれるAI統合ソフトウェア開発環境を発表し、それと2018年に発表したFPGAをベースにしたAI演算用半導体「Versal ACAP」と組み合わせて利用することで、マシンラーニング(機械学習)の推論を利用した画像認識などのシステムを低消費電力で実現できるとアピールした。そのシステムを、日本の日立オートモティブシステムズが採用すると明らかにしたが、今回のオートモーティブ ワールドでもそうしたVersal ACAPを利用した画像認識などのデモを同社ブースで行なった。

 Xilinx 自動車ビジネス事業部 上席部長のウィラード・トゥ氏は「XDF以降、主にCESでは大きな発表をいくつか行ない、例えばSeeing Machinesとの提携を発表した。Seeing MachinesはオーストラリアのDMS(ドライバー・モニタリング・システム)向けの製品を提供する企業で、われわれのFPGAをベースにしたDMS製品を今回ブースで展示している。DMSは今熱い市場になっており、各国政府もレベル2+などの自動運転にはDMSが必要だと認識を強めている。われわれのFPGAは、マシンラーニングベースのAI実装で、コストと消費電力の観点で他社よりも優れており、そこが部品メーカーや自動車メーカーに評価されている」と述べ、Xilinxのブースで展示されているSeeing Machinesのデモを公開した。

Seeing Machinesのデモ。人間の表情を画像認識できている
カメラシステム
サングラスをしていても認識できる

 Xilinxのブースで行なわれたデモは、同社のFPGAを利用して人間の顔の動きを画像認識の仕組みを利用してトラッキングするデモだ。マシンラーニングであらかじめ学習されたデータを利用して精度を上げており、ターゲットとなる人がサングラスをかけても顔の動きを追いかけることができる。こうした仕組みを応用すると、ドライバーが眠たそうにしていたり、寝てしまっていたりなども容易に判定することができ、自動で車両を停止するという仕組みへの応用が可能になる。

中国 Baiduが自動バレーパーキング向けの量産システムにXilinxのSoCを採用

Versal ACAPを利用したデモ。4つのカメラを同時に画像認識できている

 また、このほかにもXilinxはいくつかの展示を行なった。XDFで公開したVersal ACAPを利用した画像認識のデモでは、4つのカメラで撮影した画像を同時に画像認識ができる様子を公開した。XDFで日立オートモティブシステムズがデモした、サンプルを受け取ってから1か月で構築したというシステムでは、1つのカメラで撮影した画像に対して画像認識をしており、それに比べると最適化がさらに進んだ印象を受けた。

Baidu(バイドゥー)が自動バレーパーキングの量産用SoCとしてZynq UltraScale+ MPSoC(XAZU5EV)を選択

 また、トゥ氏は同社が2019年12月に発表した中国のIT企業「Baidu(バイドゥー)」との提携に関しても言及した。Baiduは、日本で言えば「Yahoo! Japan」、米国で言えば「Google」に相当するような中国の検索プロバイダーとしてはトップシェアを誇り、現在は日本でYahoo! Japanや米国でGoogleがそうであるように、検索に限らず総合的なITソリューションを提供する企業として知られている。BaiduはAIの開発にも力を入れているほか、自動運転向けのプラットフォームを中国の自動車メーカーなどに対して提供している。

 そのBaiduが開発しているのが、ACU (Apollo Computing Unit) プラットフォームと呼ばれるAIを利用した自動運転を実現する仕組みで、オープンソースとして開発されている。そのうちAVP(Automated Valet Parking、自動バレーパーキング)向けのコンピューティング基盤として、XilinxのZynq UltraScale+ MPSoC(XAZU5EV)が量産用のSoCとして採用されたとXilinxは2019年12月に発表した。

 この件についてトゥ氏は、「当初BaiduはNVIDIAのプラットフォームを利用して開発を行なっていたが、消費電力が大きすぎて製品版にできなかった。そこで、BaiduはXilinxのXAZU5EVに切り替えたのだ」と述べ、Xilinxを採用するに至った経緯を明らかにした。