ZDNet Japn Summit 2019 講演レポート

富士通クラウドテクノロジーズ
DXに向けたクラウド活用の最適解とは?--「ニフクラ」でオンプレから緩やかな移行を

 レガシーなオンプレミス資産をクラウドの活用でどのように変えていけばよいのか。富士通クラウドテクノロジーズの今井悟志氏は、2019年10月17日に開催された「ZDNet Japan Summit 2019」で、「『ハードウェア=レガシーからの脱却』DX時代を見据えたクラウド活用の最適解は?」と題して講演。今後のデジタルトランスフォーメーション(DX)時代を見据え、ニフクラを活用したオンプレからの緩やかな移行を提言した。

富士通クラウドテクノロジーズ
テクニカルデザイン部
今井悟志氏
富士通クラウドテクノロジーズ テクニカルデザイン部 今井悟志氏

クラウド活用で既存環境の“おもり”から脱却

 DX時代に対応するために、企業はレガシーなITの仕組みを見直していく必要がある。ところが組織はおろか、IT部門でもDXを具体的に検討できていない企業が多い。その理由について今井氏は次のように解説する。

 「日本の企業は既存のシステムを更新し続け、その保守に手間がかかっているためDXに進むことができない。国の調査では、8割近い企業が既存環境のお守りが大変で先に進めないという結果が出ている」

 そこでDXへの第一歩は、足かせになっている老朽化したシステムを変えることとなる。社内のシステムはリプレースを重ねてレガシーのままであるのに対し、市場では変化が起きているため、変われない企業は時代についていけなくなる。

 「今までは業務ごとに最適化してシステムを作ってきた。そろばんと台帳の世界だったものをかつての業務手順のまま電算化し、自社の資産として所有した。それが続き既存資産のお守りが大変になっている。前例踏襲ではいけない」(今井氏)

 今後のビジネスの変化に対応できるように、周囲の環境が変わるスピードに業務システムやITインフラを対応できるようにする。そこで欠かせない要素が、クラウドの活用だ。

DXでIT部門が考えるべき4つのフェーズ

 今井氏は、DXに移行する際にIT部門が考えるべきフェーズを4つに分けて説明。フェーズ1は既存環境の可視化だ。「DXとは従来の形を否定してスクラップアンドビルドするのではなく、問題がある部分を改善して変えていくことの繰り返し。そこで既存のシステム、業務の流れや仕事の制度などを一つずつ可視化し、どこが課題になりそうかをはっきりさせる」(今井氏)形となる。アプリケーションの更新時期、OSや仮想化ソフトのバージョンがいつサポート終了になるのか、ハードウェアのリプレース時期などをもとに変更すべき部分をあぶり出す。

 フェーズ2では、可視化した中でクラウドへの移行対象を出していく。例えばハードのサポートが終わっても上物でまだ使いたいシステムがあれば、それが最初に移行する対象になる。ただしオンプレに残す部分は必ず出てくるので、ハイブリッドで連携して使っていく形を想定する。例えば、データベースをクラウドに移した際の性能、クラウドベンダーに重要データのセキュリティを任せられるかなどが検討材料となる。

 もう一つ重要になるのがコストの問題だ。まず運用のコストの考え方について、「イニシャルコストのほかに、急な障害対応など日々の運用の中には見えないシャドウコストがある。それを可視化して数字にしないと、コストメリットがあるといえなくなる。上申する際にも数字を見せれば納得してもらえる」と今井氏は説明する。

 さらに、ファシリティ、インフラ、人やサービスの部分のコストについても同様に見えないコストを可視化していく。クラウドに移行することによってどれだけ変わるか、TCOやROIを明確化する。

 フェーズ3は、移行の実施検討について。移行方法には、仮想マシンを停止させて移動する「コールドマイグレーション」、最小限のダウンタイムで移行する「ウォームマイグレーション」、無停止で移行する「ライブマイグレーション」がある。この中から、自社でクラウドに移行するシステムはどの移行方法が合っているか検討する必要がある。

 フェーズ4は、実際の移行段階。その際に同社が提供するニフクラには、他のクラウドベンダーにないメリットがあると今井氏はいう。

 「オンプレ環境とニフクラのクラウドの環境をレイヤ2(L2)でつなぐことができ、VMware vSphereで仮想化されていればそのまま移行できる。業務システムをAWSなどのクラウドに移行する際にベンダーは仮想マシンを作り直さなければならないというが、それはvSphereとAzureのHyper-V、AWSのLinuxのKVMは仮想マシンの形が違うので、コンバートが必要になり、それが大変なので新規に作り直しを推奨してくる。しかしニフクラの場合、L2でつなげばオンプレ環境の仮想マシンをそのままニフクラにコールドマイグレーションすればそのままのIPアドレスで同じシステムとして使えるので仮想マシンの作り直しやコンバートが不要」(今井氏)

まずはクラウドを体験してみるところから始める

 次に今井氏は、実際にクラウドに移行するための流れを5つのステップに分けて解説した。ステップ1はオンプレミス環境の仮想化だが、これは多くの企業が済ませているであろう。ステップ2がクラウドの評価と体験。ステップ3では、体験を経て本番業務、基幹業務までクラウド化する。ステップ4はビジネスに合うようなクラウド運用に変える準備、5でマルチクラウド、ビジネスに応じて複数クラウドを連携して使うというもの。2と3がいわゆる「リフト」で4以降が「シフト」、5が「リファクタリング」にあたる。

図:クラウド移行の5つのステップ 図:クラウド移行の5つのステップ
※クリックすると拡大画像が見られます

 「クラウドの話は4と5ばかり語られている。なので、IT担当者は自分たちの現状と違う、難しいと感じてしまう。まずは自社の環境をオンプレから切り離し、クラウドに乗せてからシステムを動かしてDXに向けて見直しをすべき」(今井氏)

 ステップ2のクラウドの評価・体験という部分では、「SI会社はまずPoCから、検証環境を作ってから始めましょうと言ってくるが、検証・評価環境はIT担当者だけ、内輪でやるので本当のクラウド利用のメリット・デメリットは見えてこない。なのでまず業務の中で動いているが影響の少ないものをクラウドに移植するのが良い。」(今井氏)とする。その際に、「ニフクラではvSphere環境を使っていれば、オンプレとクラウドをL2でつなぐので楽にできるし、実際のユーザーがいる本番業務をクラウドで動かすことで運用時の課題なども可視化でき、その上クラウドの運用ノウハウを得ることもできる。」と今井氏は話す。

 ステップ3では、従来のサイロ化されたシステムをクラウドに移していく。移行自体は簡単だが、システムのパフォーマンスや取り扱うデータの置き場所などのセキュリティも考慮する。ニフクラでは例えば本番業務に耐えうるフォーマンスを出せる高速ストレージや、クラウドを使いたいが外にデータを出せない場合や地元に置きたい場合に使える「ニフクラプライベートリージョン」というサービスがある。後者は既存の自社データセンターなどにニフクラのサーバーやラック、ストレージを配置し、普通のパブリッククラウドのように使えるため、オンプレ環境をハウジングしている場合、その移行先としてハウジング場所のままニフクラに移行することさえもできる。

クラウドを活用してIT部門からのDXを実現

 ステップ4になると、ハイブリッドクラウドを運用する中で既存の仕組みを見直し、クラウドネイティブの形にシフトする。ニフクラでいえば、APIやDB・メール配信などの「エンジニアリングパーツ」といったサービスを使って業務システムをクラウドネイティブまたはマルチクラウドに合うように手作りしている部分を置き換えていく。つまり手作業を見直し可視化し、変えるべきところを API やエンジニアリングパーツを活用し自動化することで業務システム自体を次のステップにトランスフォーメーションさせる準備をする。

 ステップ5はシフトの最後の段階で、クラウドサービス利用の適正化を検討する。各社が提供するPaaSやCaaS、SaaSなどを使い、APIを使って連携してデータをつなげ、色々なクラウドをつないで適正化していく。各社サービスを分析しどれが自社の業務に適しているか使い分けていく形だ。場合によってはレイテンシなどの理由でオンプレ環境に戻さなければならないこともあるが、それは既存サーバー環境や HCI に単純に戻すのではなく、これから来るエッジ活用の時代を見据えて必要なもののみに留めるなど、これからのマルチクラウドを意識することは必要だ。この場合でも、ニフクラ上では占有、プライベートリージョン、コンテナ型仮想マシン(ベータ版)など用途に応じたサービスが利用できる。

 「物理環境の更新でなく、クラウドを利用するのがDX時代にあったITの移行方法。最初の一歩としてハードから脱却し、クラウドを活用してIT部門からのDXを実現してもらいたい。それによってIT部門の価値が上がり、ビジネスに貢献し会社の価値も上がる」と今井氏は提言し、講演を締めくくった。

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