ニュース

Qualcomm、性能が倍になったXR向けSoC「Snapdragon XR2 Platform」

Snapdragon XR2 Platform を手に持つQualcomm Technologies 副社長 兼 XR責任者 ヒューゴ・スワート氏

 Qualcommは、米ハワイ州マウイ島において「Snapdragon Tech Summit 2019」を12月3日~5日(現地時間)の3日間にわたり開催した。

第2世代のXR向け「Snapdragon XR2 Platform」を発表

Snapdragon XR2 Platform

 Qualcomm Technologies 副社長 兼 XR責任者 ヒューゴ・スワート氏は、「Qualcommは長年XRの実現につとめてきた。XRはコンシューマにとっては新しい体験をもたらす技術であり、企業には生産性の向上を実現するツールになる。QualcommはスタンドアロンXRのリーダーであり、これまでSnapdragon XR Platformを提供してきて、多くのOEMメーカーを獲得してきた」と述べ、Qualcommがとくにスタンドアロンやオールインワンと呼ばれるゴーグルとコンピューティングデバイスがセットになった機器に多く採用されてきた歴史について説明した。

第1世代は30を越える機器に採用されている

 実際、QualcommのSoCは多数のVR/AR/MR(XR)の機器に採用されている。有名なところではFacebookが販売している「Oculus Go」と「Oculus Quest」のほか、MWC 19でMicrosoftが発表した「Hololens 2」があり、スワート氏によれば30を越えるスタンドアロンXRに採用されているという。

 同氏は、Snapdragon XR Platformが数多く採用されているのは「性能が高いのもさることながら、消費電力が低いことが評価されている」とした。

従来製品はメインストリーム向けとして、XR2がプレミアム向けと位置づけられる
Snapdragon XR2 Platformの特徴

 今回、同氏が発表したSnapdragon XR2 Platformは、2017年に発表されたSnapdragon 835/845ベースのSnapdragon XR Platformの次世代品となる。前世代のモデルと比較すると、CPU/GPUの性能ともに倍になっているという。

 とくにGPUに関してはカスタムシリコンでハードウェアが強化されており、シェーダーのピクセルレートが1.5倍に、テクセルレートも3倍になっているが、引き続き前世代と同じような低消費電力は維持されているという。

 また、ディスプレイコントローラも強化されており、3×3Kのパネルで最大90Hzまでリフレッシュレートを引き上げることができるほか、8Kの360度ビデオを60fpsで再生できる。

7つのカメラを制御できる

 ISP周りも強化されており、同時に7つのカメラを制御可能。これにより、前方や後方だけでなく、視線追跡などの機能を実装できる。XR向けのSoCで7つのカメラを同時制御できるのは今回がはじめてだということだ。

 さらにXR向けのプラットフォームとして、はじめて5Gに対応しており、広帯域幅で低レイテンシという5Gの特徴を活かした機能を利用できる。たとえばクラウドゲーミングをXRデバイスを使って楽しむといったことができる可能性がある。

Snapdragon 835との性能比較

 ただし、QualcommはSnapdragon XR2 Platformの詳細は説明せず、CPU/GPUは謎に包まれたままだ。性能に関してはSnapdragon 835ベースのSnapdragon XR Platformと比較してCPU/GPUはそれぞれ2倍の性能を実現しており、ビデオ帯域に関しては4倍、サポートできる解像度は6倍、そしてAI性能に関しては11倍になるとしている。

日本の通信キャリアKDDIやPokemon GoのNianticとも協業

Niantic CTO フィル・ケスリン氏

 今回の発表会では、Qualcommは多数のパートナーを招待した。そのなかでも注目を集めたのは日本KDDIと「Pokemon GO」で知られるNianticだ。

KDDI株式会社 理事・パーソナル事業本部 サービス本部長 山田靖久氏

 KDDI株式会社 理事・パーソナル事業本部 サービス本部長 山田靖久氏はKDDIが、Nreal、Qualcomm、KDDIの3社で協同で開発している、メガネ型MRデバイスについて説明を行なった。

 このシステムはNrealが開発しているUSB Type-C接続のメガネ型ディスプレイと、ソニーモバイルが開発中の5Gスマートフォンをセットにした開発機器を、希望する開発者などに貸し出すプログラム(EVE 2020)で、すでにNrealのWebサイトで募集がはじまっている。

 山田氏はこの取り組みについて、「MRデバイスに関してはエンタープライズ向けのアプリケーションがほとんどだが、KDDIはauのブランドでコンシューマ向けにこうした機器を取り組む可能性を訴求している」と述べ、Snapdragon XR2 Platformなどに期待感を表明した。

コンシューマ向けのXR+5Gデバイスを目指す
3社が協同で開発
auブランドで

 また、NianticはCTOのフィル・ケスリン氏が登壇し、「Qualcommとは複数年のパートナー契約を結んだ。Snapdragon XR2 Platformに弊社の技術を提供していく」と述べ、Snapdragon XR2 PlatformにNiantic リアルワールド プラットフォームなど、Nianticが開発している技術を多数提供していくと語った。

 「Niantic リアルワールド プラットフォーム」はPokemon Goなどで利用されている基本的なプラットフォームで、今後同社のゲームがSnapdragon XR2 Platformで作られるスタンドアロンのXRデバイス上で動作する可能性が高くなると言える。