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北國銀行、日本ユニシスのクラウド型勘定系システム「BankVision on Azure」を採用

2021年の稼働開始を目指す

 日本ユニシスのオープン勘定系システム「BankVision」の稼働基盤に日本マイクロソフトのパブリッククラウドサービスMicrosoft Azureを採用した「BankVision on Azure」を、株式会社北國銀行が採用すると、21日、発表した。なお、フルバンキングシステムにおけるパブリッククラウドの採用は、国内で初めてとなる。

 また北國銀行、日本ユニシス、日本マイクロソフトの3社では、2021年夏までに「BankVision on Azure」を稼働させる目標を掲げており、共同で導入プロジェクトを開始する。また北國銀行は、日本ユニシスとともにシステム子会社「デジタルバリュー」を都内に新設することも明らかにした。高度IT人材を獲得し、北國銀行のシステム開発力強化を図る。

日本ユニシスとマイクロソフトによるこれまでの取り組み

 日本ユニシスは2007年5月、Windows ServerおよびSQL Serverを基盤とした世界初のオープン勘定系システム「BankVision」を稼働させ、地方銀行10行に導入。地方銀行における経営改革やサービスの強化、TCO削減などに貢献したきた。北國銀行では、2015年1月にBankVisionを稼働させている。

 また、日本ユニシスと日本マイクロソフトは2016年度から共同で、Microsoft Azure上でBankVisionの検証を実施し、2018年3月からMicrosoft Azure採用に向けた共同プロジェクトを開始。米Microsoftのエンジニアリング部門と連携して、技術面、サービス面、サポート面の検討、ビジネス面における協議を行ってきた。

 日本ユニシス 取締役常務執行役員の葛谷幸司氏は、「BankVisionは、経営コンサルティングサービスのほか、デジタル化による地域企業への業務効率化支援にも貢献できるものになる。非化石証書のトラッキングや観光エンタメプラットフォームなど、金融サービス以外の取り組みを通じて社会課題の解決につなげていくことになる。単に銀行業務システムをMicrosoft Azureに乗せるだけでなく、付加価値を提供することを目指しており、今後10年先を見据えた取り組みになる」と位置づけた。

BankVisionのモダナイゼーション
日本ユニシス 取締役常務執行役員の葛谷幸司氏

 BankVision on Azureでは、地方銀行のビジネスモデル変革に向けて、銀行業務のデジタル化とともに、地域の産業や地域の顧客に対するコンサルティング業務、デジタル化支援を行い、地域のさらなる活性化を実現する。

 さらに、Microsoft Azure上でのデータ活用プラットフォームの実現に向けた検討を行い、銀行データや地域データを活用した地域エコシステムの実現を目指す。

 そのほか、金融サービスの強化や銀行経営の効率化を目指し、勘定系システムをはじめとした銀行システムにおいて、既存資産を生かしながらクラウドの利用メリットを最大化するよう、コンテナやPaaS技術などのさまざまな技術の活用を進めるとのこと。

 BankVisionを導入しているほかの地方銀行に向けては、「すでに提案を開始しているが、それぞれに導入時期が異なる。だが、Microsoft Azureの方向性はある」などとした。

 このほか同社では、BankVision on AzureやオープンAPI公開基盤「Resonatex」を活用し、異業種やFinTech企業などに銀行機能をサービス提供する(Bank as a Service)の事業化の検討を進めているとのこと。金融機関における新たな収益機会の創出や、業種や業態の垣根を越えたビジネスエコシステムによる新たな価値創造を目指すとしている。

BankVision on Azure
BaaS事業の検討

 一方で、日本マイクロソフト 執行役員常務 サービス事業本部長の内田聡氏は、「国内においては、200人の専任体制でお客さまを支援しているが、米本社からの支援体制もあり、ミッションクリティカルサポートをエンドトゥエンドで提供できている。今回のMicrosoft Azureの採用において、99.999%という厳しいSLAを実現するのは、日本マイクロソフトだけでは無理であり、米本社のエンジニアリングチームと一緒になって検討を進め、技術的な裏付けを行った」と、本社のバックアップのもとで達成されたことを説明した。

 さらに、「東日本および西日本のデータセンターを活用した冗長構成の実現、継続性の実現も重要な課題として取り組んだ。ITインフラ、ルール、ガバナンス、IT人材の近代化に取り組むことなるが、継続的にデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現することが必要である。その観点から見れば、これは始まりにすぎない」とも述べている。

BankVision on Azureの実現
日本マイクロソフト 執行役員常務 サービス事業本部長の内田聡氏

 米Microsoft コーポレートバイスプレジデント(CVP)のコーリー・サンダース(Corey Sanders)氏は、「コンプライアンスとセキュリティを高めることができ、DXを加速することができる。フルバンキングシステムを日本で展開できることをうれしく思う。世界に向けた新たなスタンダードを提供することが可能になる。エキサイティングなものであり、新たなやり方で銀行業務が展開できるようになる」とコメントしている。

 なお、先ごろ発生したOffice 365のメールなどの障害については、「大変ご迷惑をおかけした。なるべく早く事態を沈静化し、再発防止に取り組む」(日本マイクロソフトの内田執行役員)と述べた。

米Microsoft コーポレートバイスプレジデント(CVP)のコーリー・サンダース

さらなる経営の効率化やデータ活用基盤の実現などに向け全面クラウド化を決定

 一方、北國銀行では、さらなる経営の効率化や開発スキルの向上、フレキシブルな環境変更、データ活用基盤などの実現のため、全面クラウド化の方式を決定。周辺システムからパブリッククラウド化を行い、Microsoft Azureへの移行を開始している。

 2019年9月にリリースした、個人がモバイル環境から利用できるインターネットバンキングシステムは、9割以上の機能をMicrosoft Azure上で実現したという。また、クラウド移行に伴いデジタル化を推進し、地域コンサルティング機能などを強化。新たなビジネス領域にも進出する姿勢をみせている。

 北國銀行 代表取締役専務の杖村修司氏は、「154カ所あった店舗を100カ所に削減するなど、10年以上に渡って銀行のビジネスモデル変革に取り組んできた。生き残ることができる体質になっていると判断している」と前置き。

 「だが地方銀行にとっては、単に生き残るだけでなく、地域にいかに貢献できるかが最大の命題であり、地域の発展に継続的に貢献するためには、さらに一歩改革を進めていく必要がある。システムをトリガーにした経営戦略が必要であり、顧客向けシステムへのIT投資を進めていくことになる。地域を巻き込んだデータ連携のエコシステム構築と、BaaSの提供による、利便性の高い新たなサービスを創造していく」とした。

北國銀行のクラウドジャーニー
北國銀行 代表取締役専務の杖村修司氏

 今回のMicrosoft Azureの採用については、「勘定系システムは絶対に止められないもの。本当にできるのかというところを検証し、実証実験を行った結果、採用を決めた。企業に対して銀行の機能を提供したり、APIを活用したり、あるいはシェアを行い、コラボレーションができる仕組みが重要であり、レガシーのシステム、レガシーの言語で限界がある。その点では、Microsoft Azureの採用が適していると考えた」とした。

 あわせて、「10年以上前は枯れたシステムの方が安心であり、かつ安いということで、他行に比べても情報システムは最後の方であった。だが経営トップが変わり、経営方針が変わり、顧客志向で考えるようになった結果、システムをトリガーにしないといけないということに至った。顧客起点で考えた結果の変化である」と、今回の採用理由を説明。

 「かつてのIT投資は年間365億円かかっていたが、いまはそれが280億円になっている。これを2025年には250億円に減らしながら投資もしていく。その際には、7~8割を新規開発に投資したいと考えている」と述べた。

北國銀行のシステム戦略