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よりクラウドファーストなアプローチでエコシステムを拡大――、日本テラデータが2020年に向けた新戦略を発表

 日本テラデータ株式会社は20日、国内報道関係者を対象にした説明会を開催。10月に米国デンバーで開催された米Teradataのプライベートカンファレンス「Teradata Universe 2019」での発表内容に加え、2020年度に向けた国内ビジネスの方向性について紹介を行った。

 説明会に登壇した日本テラデータ 代表取締役社長 高橋倫二氏は「われわれは昨年から、企業のデジタル化を推進するアナリティクスプラットフォームとしてTeradata Vantageを提供しており、世界中の顧客から高い評価を得ている。今後はVantageの活用を促進するソリューションを展開しながら、日本のお客さまがビジネスにおける“答え”を探す支援をしていく」と語り、日本市場でも「Teradata Vantage」を中心に事業を展開していく方針を明らかにしている。

日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏

 説明会の冒頭、高橋社長は、11月17日(米国時間)に米Teradataが発表したオリバー・ラッゼスバーガー(Oliver Ratzesberger)氏のCEO退任について触れている。ラッゼスバーガー氏は今年1月に同社CEOに就任したが、わずか1年にも満たない中での突然の退任だっただけに、市場にはさまざまな憶測が流れた。

 高橋社長は「オリバー(ラッゼスバーガー氏)はビジョナリストとして、(クラウドファーストなど)ここ数年のTeradataの方向性を確たるものとしてくれた。その功績にTeradataは大きな感謝を寄せている。現在、本社はオリバーが確立したビジョンを継承し、それを実現できる実行力のあるCEOを選定中だ」と語っており、ラッゼスバーガー氏の退任後も同社のビジョンや戦略に変更がない点を強調している。

 なお新CEOの決定までは、エグゼクティブチェアマンを務めるビクター・ランド(Victor Lund)氏が暫定CEOを兼務する。

就任から1年たたずして突然の退任となった、前CEOのオリバー・ラッゼスバーガー氏(2017年撮影)。Teradataは現在、ラッゼスバーガー氏のビジョンを実行する次期CEOを選定中だ

Vantageの活用を推進する6つのソリューション/サービスを発表

 Teradataは今年のTeradata Universe 2019において、あらためて“クラウドファースト”を前面に掲げ、Teradata Vantageをコアとするクラウドベースのアナリティクスプロバイダとして、ビジネスを展開していくことを明言している。

 そしてこの戦略に従い、Vantageの活用を推進する6つのソリューション/サービスを発表した。

Teradata Universeで発表された、Vantageの6つのアップデート。全体的に水平方向で、エコシステム拡大を前提にしたアップデートとなっている点が特徴
Vantage on Google Cloud Platform

Vantageのプロバイダとして、AWS、Microsoft Azureと並んでGoogle Cloudも選択可能に(2020年リリース予定)

Consumption Pricing

新たなプライシングモデルとして従量課金型(Pay-as-You-Go)を選択可能に、テストや月末のバッチ処理など期間限定のワークロードに最適(2020年第1四半期リリース予定)

Native Support for Low-Cost Storage

オンプレミスの永続的データストアに加え、オブジェクトストレージの「Amazon S3」と「Microsoft Azure Blob Storage」をNOS(Native Object Storage)として追加ライセンス不要でネイティブサポート(2020年第2四半期リリース予定)

Hadoop Migration Service

顧客のHadoop環境を調査し、Vantageへと移行/統合するための3つのサービス(アセスメント、プランニング、インプリメント)(提供済み)

Vantage Analyst

セルフサービス実行プラットフォーム「Teradata AppCenter」にビジネスアナリスト向けの分析アプリケーションを実装、ノーコードでパス分析やクラスタ分析、モデル構築やそれらを組み合わせたオペレーション(IoTセンサーデータからの異常発見、機器の故障リスクスコアの作成など)が可能に(2019年11月から順次提供)

ビジネスユーザーがコーディングなしのセルフサービスで高度な分析ができる「Vantage Analyst」は、パス分析、モデル、ワークフロー、テキスト分析、クラスタ分析の5つのモジュールが提供される。単体だけでなく組み合わせて使うことも可能
Vantage Customer Experience

Vantage Analystの各モジュールを組み合わせて分析する、クラウドベースのカスタマーデータプラットフォーム(CDP)、外部アプリケーションともAPIで連携可能(2020年第1四半期リリース予定)

Vantage Analystの各モジュールをもとにしたカスタマーエクスペリエンス向上のためのCDP「Vantage Customer Experience」は、まずはSaaSとして提供される予定

 これらのアップデートに共通して浮かび上がってくるキーワードは“エコシステムの拡大”である。高橋社長は「テラデータといえば現在でも“高いハードウェア”というイメージをもつ人もいるが、われわれは確実にクラウドファーストへとシフトしている」と語っているが、実際、今回のVantageのアップデートを見ても、パブリッククラウドとの統合/機能拡張やサードパーティとのAPIによる連携、Hadoopのマイグレーションなど、既存のシステムを水平方向に拡張している感が強い。

 もちろん、Teradata Universe 2019では「Teradata Database」など既存のポートフォリオの機能拡張も発表されているが、かつてのような製品単体のスケールアップよりも、社内外のシステムとの統合/連携を重視するスケールアウト型の拡張が強調されており、同社が2年前から推進してきた“Teradata Everywhere”――、顧客が望むあらゆる環境でTeradataのアナリティクスを提供するというビジョンに沿っていることがうかがえる。

 エコシステムを指向するテラデータの動きとしてもうひとつ象徴的だったのが、Teradata Universe 2019で発表されたドイツテレコムとの戦略的パートナーシップ提携である。

 ドイツテレコムはVantageを同社のITソリューションポートフォリオに追加し、データ分析アプリケーション「デジタルセールスアシスタント」を共同開発、小売/不動産/製造業などの中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)にフォーカスすると発表した。

 これまでTeradataは、最先端のアナリティクスプラットフォームを求めるラージエンタープライズをターゲットとしてきたが、今回のドイツテレコムとの提携を通したSMBへのリーチは、同社にとってある意味、大きなターニングポイントであり、高橋社長は日本でもパートナーを通した同様のSMBサポートを提供する可能性を示唆している。

 同社のエコシステム拡大が次のフェーズに入ろうとしていることのあらわれともいえるだろう。

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 「ラッゼスバーガー氏の退任は、Vantageの売上が落ちていることに起因するのでは」という報道陣からの質問に対し、高橋社長は「Vantageの売上が落ちているという指摘は当たらない。全社の売上が落ちた原因はサブスクリプションモデルへの急激なシフトがグローバルで進んでおり、タームライセンスの数字が下がったことによるものだと見ている」と語っている。

 また、日本においても「Vantageの新規顧客のほとんどはサブスクリプションモデルを採用しており、既存の顧客の移行も急激に進んでいる。またサブスクリプションモデルの解約率も非常に低い」と同社のビジネスモデルが“クラウドファースト”へと大きく変化していることを強調する。

 昨年のリリース以来、アナリティクスプラットフォームとして日本でも順調に顧客数を伸ばしているというVantageだが、高橋社長はその一例として、Teradata Universe 2019でも紹介された日野自動車のケースを紹介している。

 トラック/バスは稼働時間が利益に直結するため、稼働時間が下がることは極力避けなければならないことから、日野自動車は同社が提供するIoTシステム「Hino Connect」にVantageを導入、故障予測や定期点検のデータから予防整備の精度を大きく向上させ、路上故障を劇的に低減、予定外修理ゼロを実現したという。

Vantageの国内事例として紹介された日野自動車では、IoTデータをもとにした故障予測の精度向上により、トラックやバスの路上故障を大幅に低減、予定外修理に至ってはゼロを実現したという

 こうした顧客の成功事例を国内でもさらに積み重ねるべく、高橋社長はVantageのパートナービジネスおよびコンサルティングビジネスを、今後さらに強化する方針を明らかにしている。

 クラウドファーストへのシフトをテラデータ自身が達成するためにも、今後はVantageというブランドとそのエコシステムの浸透と拡大が同社にとっての大きな挑戦となる。