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 りそなホールディングス(HD)は2019年6月から小型ロボットとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを組み合わせた新システムを導入し、現場の各種帳票にまつわる入出力作業の省人化に取り組んでいる。実証実験ではなく、既に東京都や大阪府などの施設内で50セットほどが本稼働している。

省人化を支えるロボットシステム
省人化を支えるロボットシステム
(出所:りそなホールディングス)
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 「1セットのハード費用はロボットを含めて約20万円。1セットに1人分の仕事を任せているため、約1カ月で投資回収できた」。同社の荒木敏郎デジタル化推進部AI・RPA推進チームグループリーダーは満足げだ。

 新システムが担う作業は帳票に関する一連の業務だ。具体的には、OCR(光学文字認識)ソフトで読み取ったり直接送られてきたりした紙の伝票のテキストデータなどをRPAのソフトロボットで加工する。次にキーボード・エミュレーター・ソフトがそのデータを勘定系システムに入力する。

 勘定系システムが入力内容を現場のプリンターで帳票として出力すると、ロボットが巧みにアームを動かして取り出す。「人がすると手間がかかるデータの読み取りや入力、帳票用紙の挿入、出力帳票の取り出しなどが要らなくなった」(荒木グループリーダー)。

「中継ぎ」に託した思い

 新システム構築の背景として、りそなHDが2022年3月までにRPAなどを使って年100万時間分の作業量削減を目標に掲げていることがある。目標に向かってRPAやAI-OCRなどを使って業務改善を進めるなかで、一部の部署で改善を妨げるボトルネックが分かってきた。勘定系システムだ。「OSやセキュリティーなどの問題で(勘定系システムを操作するパソコン側で)RPAを使えなかった」(同)。

 実はりそなHDは2021年3月期に勘定系システムの改修を計画している。改修が済めば勘定系システムでもRPAを導入できるようになるという。とはいえ少しでも省人化や業務改善を進めたい。

 そこで、システム改修を終えるまでの「中継ぎ」として、少ない投資で高い効果を発揮する新システムを開発しようと考えた。「安く開発できる手段はないものか」。様々な方法を考える荒木グループリーダーらの目に留まったのが、今回採用したロボットだった。

 人手に代わって働くようになったのは、中国シンセン・ユージェン・テクノロジー(Shenzhen Yuejiang Technology)製の「DOBOT Magician」だ。価格は約15万円と「相場より安かった」(同)。これにRPAやキーボードエミュレーターなどをインストールしたパソコン、Webカメラなどを設置して新システムを組み上げた。

「DOBOT Magician」
「DOBOT Magician」
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