ボルボはEV版の「XC40」を皮切りに、ゼロエミッション化を加速する

ボルボが小型SUV「XC40」の電気自動車(EV)版となる新モデル「XC40 Recharge」を発表した。全車種を電動化する計画の実現に向けた最初の完全EVで、2025年までに二酸化炭素の排出量を40パーセント削減するという意欲的な目標を達成するための重要なステップでもある。
ボルボはEV版の「XC40」を皮切りに、ゼロエミッション化を加速する
PHOTOGRAPH BY VOLVO

ボルボは約10年前に安全性を追求していくと宣言したとき、ボルボ車に搭乗中の事故による死者・重傷者数を2020年までにゼロにする計画を打ち出していた。同社は今年に入ってから目標の達成は難しいと認めたものの(理由のひとつにドライヴァーの「マナーの悪さ」を挙げている)、現在販売中のクルマには先進的な安全システムを数多く搭載している。

クルマが道路の外に飛び出してしまった際の負傷を抑え、脇見運転には警告を発し、オオヘラジカが飛び出してこないかと監視までする。そんなスウェーデンの自動車メーカーであるボルボ(親会社は中国の吉利汽車)が、今度は別の野心的な目標を視野に入れている。カーボンフットプリントだ。

EVが地球温暖化の解決策になるという信念

ボルボは2025年までに二酸化炭素の排出量を40パーセント削減する目標を立てている。目標達成のために製造工程や事業指針を見直し、工場から新車を出荷する際の配送方法まで再検討する。

クルマ自体も重要な役割を果たす。ボルボは10月16日(米国時間)にロサンゼルスで発表会を開き、同ブランド初の完全電気自動車(EV)を誇らしげに披露した。小型SUV「XC40」のバッテリー駆動タイプで、その名も「XC40 Recharge」という。

ボルボは今後も継続的にEVを発表していく方針で、2025年までに収益の半分をEVで上げる目標を掲げている。ボルボは全車種を何らかのかたちで電動化する予定で、残りはハイブリッドということになる。

今回の新モデルに与えられた「Recharge」という呼称は、EVかプラグイン機能をもつ車種に与えられる。10月16日以降にボルボのプラグインハイブリッド車を買う顧客は、1年間は実質無料で充電できるという。居住地域の平均的な電気料金から計算して、電気料金分をボルボが“返金”する方式をとる。

「クルマでの移動をやめるということでは、地球温暖化問題の解決にはなりません」と、ボルボの最高技術責任者(CTO)であるヘンリク・グリーンは言う。「わたしたちとしては持続可能なかたちで人々に移動の自由を提供し続けたいのです。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを徐々に改良していけば、地球温暖化問題も徐々に解決できるだろう、とはなりません。再生可能エネルギーを使って走り、生産にも再生可能エネルギーを使うEVに乗って初めて、地球温暖化問題が解決できるのです」

再生可能エネルギーでの生産を目指す

XC40 Rechargeは、出力が150kWのモーターを2基搭載する。ふたつの車軸にそれぞれ1基だ。バッテリー容量は78kWhで、床下に配置されている。システム全体で408馬力を生み出し、トルクは推定で600Nmとなる。時速0-60マイル(時速約97km)の加速は4.9秒だ。

出力150kWの直流急速充電器を使えば、全容量の80パーセントまで40分以下で充電できる。航続距離はEPA試験の結果を見るまでは不明だが、ボルボの予測では欧州のWLTP基準で400kmに達する。これは米国基準に換算すると約200マイル(約322km)となるという。発売は来年の予定で、米国での価格は政府の補助金を差し引いて約5万ドル(約542万円)からとなる。

ボルボは二酸化炭素の排出量削減について壮大な目標を立てているが、具体的な方策についてはあまり明かしていない。グリーンによると、事業指針を見直しつつ、サプライヤーも巻き込んでいく方針だという。生産工程に用いる電力のエネルギー源は、風力や太陽光、水力に切り替えていく考えだ。

PHOTOGRAPH BY VOLVO

さらにグリーンによると、ボルボはバッテリーの調達先に細心の注意を払っており、リサイクル可能かどうかを最重要視しているという。一方で、寿命を迎えたバッテリーを積極的に再生利用する計画があるかについては、明言しなかった。

スマートフォンのような使い勝手

ボルボは今回の新モデルがほかの車種と安全面で同等以上になるよう、努力に努力を重ねたのだとグリーンは説明する。しかし、これまで車体の前部に搭載されていたエンジンがなくなった一方で、床下のバッテリーパックを保護する必要が生じたことから、安全システムを再設計しなければならなかった。この点についてボルボは詳細を明かしていない。

ガソリンエンジンのXC40と今回のEV版とでは、外観のデザインが微妙に異なる。フロントグリルの代わりに平面のカヴァーが装着されるなど、いくつかの違いが見てとれる。

PHOTOGRAPH BY VOLVO

一方でインテリアを見ると、大幅に高性能になっていることがわかる。ボルボいわく「スマートフォンと同じぐらい使いやすい」というインターフェースを備えたインフォテインメントシステムを、グーグルとの協業によって実装することを明言している。

このシステムは自然言語による音声入力で操作できるようになっており、「毎回きちんと声を認識する」のだという。人工知能(AI)によってドライヴァーの好みを学習するので、使い込むほどに反応の精度が上がっていくシステムだ。

また、テスラ車のように無線によるソフトウェアのアップデートに対応している。このためXC40 Rechargeのソフトウェアは、常に最新の状態に保たれることになる。

※『WIRED』によるボルボの関連記事はこちら電気自動車(EV)の関連記事はこちら


RELATED ARTICLES

TEXT BY ERIC ADAMS