ドローン、顔認識、通信傍受…最新技術の導入で、アメリカの警察の監視活動が急拡大

警官とドローン

Associated Press/ Noah Berger

  • アメリカ各地の警察は、新たなテクノロジーの登場のおかげで、監視システムの強化をより低コストで効果的に行えるようになった。
  • ドローン顔認識、アルゴリズムによる監視活動は、警察の活動を支える多くのテクノロジーのごく一部だ。
  • 警察による最新テクノロジーの利用が、プライバシー、言論の自由、正当な司法手続きを脅威にさらす可能性があるとして、人権擁護の支持者らは警戒を強めている。

新たなテクノロジーにより、警察は容疑者を追跡し、犯罪を未然に阻止する方法を手に入れつつある。それはまた、警察の市民に対する監視範囲の急速な拡大も意味している。

アメリカ各地の警察は、市民やネット上のプラットフォームなど監視対象の範囲をテクノロジーで拡大している。この監視活動は、警察の捜査が慎重にならざるを得ない性質があることからほとんど公表されることはない。だが、裁判、公開された公的記録、警察自身が誇らしげに語る犯罪防止等の成功物語などを通して、警察の戦略はしばしば明らかになる。

プライバシー擁護派は、最新テクノロジーによる警察の監視体制強化について警戒を強めている。ブレナン司法センター(Brennan Center for Justice)が10月7日に公開したレポートは、ニューヨーク市警察による監視戦略について取りまとめたもので、プライバシー、言論の自由、正当な司法手続きが脅威にさらされる可能性があることを強調している。

このテクノロジーは最新のものだが、すでに全米各地で広く利用されている。ジョージタウン大学プライバシー&テクノロジーセンター(Center on Privacy & Technology at Georgetown Law)の研究者が行った調査によると、地域の警察署により市民の顔の情報が収集され、今ではアメリカの成人の半数以上の顔がデータベース化されているという。

警察によるテクノロジーを用いた監視に規制をかけようと、行動を始めた街もある。サンフランシスコは5月、警察による顔認識ソフトウェアの使用を禁止した初めての都市となった。また、ニューヨーク市議会はニューヨーク市警察に対し、監視テクノロジーに関する戦略の公開を命じる法案を巡って審議を続けている

だが、このような規制がない場合、警察の戦略は極めて不透明だ。また、監視方法について警察がどれだけ透明性を高める義務があるのか、それを示す判例もほとんどない。

アメリカの警察が、監視のために用いているテクノロジーについて、分かっていることをまとめた。

顔認識

顔認識

Thomas Peter/Reuters

現在の顔認識テクノロジーは、警察が犯罪捜査に利用するほど洗練されてきている。具体的には、固定カメラを通して街中を歩く人や広場の人混みをリアルタイムでスキャンし、AIの力で容疑者の顔とマッチする顔を検索できるということだ。このテクノロジーはFBIの他、フロリダ州、オハイオ州、メリーランド州、カリフォルニア州で多くの警察に利用されている。

しかし顔認識テクノロジーは、容疑者ではない別人の顔を誤ってマッチさせてしまう怖れもある。そのため活動家とAIプログラマーが連携し、法の執行機関に対して顔認識テクノロジーの利用を禁止するよう訴えていると、NBCニュースが報じた


ビデオ分析

ビデオ分析

Getty/Oli Scarff

顔認識と同様、ビデオ分析ソフトウェアは映像をスキャンし、AIの力で人や物を特定する。それによって例えばバッグ、服、車など、容疑者につながる手がかりを、法執行機関に提供できるようになる。

アメリカ国内でどれだけの警察署が、ビデオ分析ソフトウェアを利用しているのか、正確には分からない。IBMは、4月に自社のビデオ分析ソフトウェアを市場から撤退させるまで、多数の警察署にソフトウェアのライセンスを与えてきた。撤退後も契約のある警察署に対しては、サポートを続けている。

ソーシャル・メディアの追跡

ソーシャル・メディアの追跡

Reuters

ソーシャル・メディア・プラットフォームの広がりは凄まじく、既成の監視ツールを用いて名前でユーザーの検索ができ、彼らの友人や家族のネットワークも特定できる。法執行機関は、それを巧みに利用している。

500以上の警察署を対象とした2016年の調査によると、75%がソーシャル・メディアを用いて犯罪の情報や調査に必要な機密情報を集めており、60%は容疑者に関する情報を得るために、ソーシャル・メディア企業に直接連絡を取ったという。

アルゴリズムによる監視

アルゴリズムによる監視

Lucas Jackson/Reuters

警察はアルゴリズムを使って犯罪データを解析し、将来犯罪が起こりそうな場所を予測したり、AIが犯罪を起こしそうだと考えている人物のリストを作成したりしている。

警察がこの技術をどの程度利用しているかはほとんどわかっていないが、ブレナン・センターとニューヨーク市警との3年にわたる法廷闘争により、警察がこのような人工知能を探し、日常的に利用していることが明らかになった。この技術は、カリフォルニア州全域の警察でも使われている。


携帯電話基地局になりすます傍受装置「スティングレイ」

携帯電話基地局になりすます傍受装置「スティングレー」

Cole Bennetts/Getty Images

「スティングレイ」は、強力な信号を発信して携帯電話基地局になりすまし、信号の範囲内にいる携帯電話が接続するように仕向ける。警察がスティングレイを利用すると、接続された携帯電話の位置情報やIDナンバーを入手できるようになる。

アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union, ACLU)の調査によると、スティングレイは27州にわたる75の警察署で利用されている。移民・関税執行局を含む14の国家機関もスティングレイを用いていることが知られている。

ドローン、監視塔、そしてさらなるカメラ

ドローン、監視塔、そしてさらなるカメラ

Elijah Nouvelage/Getty Images

ハイテク技術の進歩により、警察が監視塔、カメラ、無人機などの複雑なネットワークを構築して、広い範囲を監視するコストが安くなっている。

大都市の警察では監視カメラのネットワークを構築することが一般的だが、2016年には全米の165以上の警察署がドローンを購入し、警察は管轄地域の調査、容疑者の追跡、犯罪現場の捜査、交通量の監視にドローンを使用している。


[原文:How police are using technology like drones and facial recognition to track people across the US

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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