タブレットで、ここまでできるように...!
「Adobe Fresco」は、最新のタブレット用ペイント&イラストアプリ。昨秋に発表され、リリースは今年後半になることが予定されています。今回、先行レビューを担当した米GizmodoのAndrew Liszewski記者によれば、iPadをはじめタブレット界に新たな革命をもたらす存在なのだとか。一体どんなところが特別なのか...一足早くチェックしてみましょう!
そもそも当初は、映画鑑賞や読書などメディア消費用端末として位置づけられていたiPadですが、最近では“オーバーサイズなスマートフォン”以上の役割を担っています。ワードやスプレッドシートなどの作業系アプリを使えばPCの代わりにもなりますし、Apple Pencilの登場以降はクリエイターツールとしての存在感をさらに強めつつあります。
年内には、フルバージョンのiPad用Adobe Photoshopのリリースが予定されていることも忘れてはいけないところです。
フォトショやイラレなどのAdobeソフトウェアを20年以上使ってきた身としては、Adobe Frescoのインターフェイスは非常に馴染みあるものとして受け入れやすかったです。デスクトップのライト版であるAdobeのモバイルアプリと比較すると、小さな画面や指のタップといったタブレットならではの使い方に最適化されているのがわかります。
Adobe Frescoはフォトショやイラレの代わりになるものとして設計されたわけではありませんが、ペイントやイラストのツールとして独自の役割を果たすことが期待できます。
たとえば、画面左にはAdobeのツールバーが、右にはフォトショやイラレのレイヤーパネルの簡易版があります。また、イラレに対応したベクターブラシやフォトショ互換のピクセルブラシを同じドキュメント内で操作できるようになっています。
私が試したプレリリースバージョンのFrescoではAdobe Creative Cloudのフル対応していなかったため全機能使えたわけではなかったのですが、Adobeは今後、シームレスにエレメントを追加・編集できるようになることを明かしています。
Frescoは既存のAdobeワークフローの単なるアドオンツールではなく、ペイントやイラストに優れたスタンドアローン型アプリとして使えます。AdobeはSenseiのAI機能を活用して、新たにライブブラシツールを導入しました。
上のGIF動画からもわかるように、これによりブラシの描き方や色の重なり方、影の出し方などのリアルさが増しています。これは、単純にデジタルな世界で描くことが楽しくなるだけでなく、実際にアーティストがキャンバスに描く体験にグッと近づいていることがわかります。
基本的には、タブレットであってもいつものAdobeのUIになっていますが、タッチスクリーンならではの機能も登場しました。たとえば、2本の指で画面をダブルタップするだけで簡単にひとつ前の作業に戻ることができます。またApple Pencilで2回タップするとカラーパネルが表示されます。
さらに、画面内にショートカットボタンも導入されました。現時点ではブラシやイレーサーなどのツールを素早く切り替える作業ができますが、Adobeによれば今後よりカスタマイズ可能なショートカット機能が利用できるそうです。
個人的に、ひとつだけ物足りなく感じたのはキーボードショートカットです。個人的には(ピアニストのように)フォトショでキーボードを叩くのに慣れていたので、無いとやっぱり違うんだなぁと初めて気づかされました。この点は、Adobeがデスク用PCのソフトウェアからタブレットに変遷するうえで、既存ユーザーとどう向き合うか試されているところかもしれません。
限られた画面領域でFrescoのような堅牢なアプリを作動させるために、 UIをどう進化させるかはAdobeにとってひとつの大きな課題だといえます。ツールセットを活用しようとすればするほど「選択とマスク」などの高度な機能を使うことになり、学習曲線が一気に急勾配になるのを実感しました。それ自体はわるいことじゃないのですが、実際にiPad用フォトショが登場したら、インターフェイスやタッチスクリーン上のツールに対して多くのユーザーが使いづらさを訴えるかもしれません。でも結局、こうした変化を柔軟に受け入れて順応した者勝ちな気がします。
iPadのようにポータブルなデバイスで、このようなパワフルなツールがフルバージョンで使えるようになったのは、やはりひとつの革命だといえます。iPadの登場によって、デスクに張り付いていた私たちに自由がもたらされたのはずいぶん前の話ですが、すべてのソフトウェアを不自由なく使える状態になるまでには多少の時間がかかりました。Frescoの登場によって、いま最も先進的なデジタルペインティングツールを妥協することなく使えるようになるのは、非常にエキサイティングなことではないでしょうか。