敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。

今回は英文添削ソフトGrammarlyで膨大な言語データの分析に携わるコートニー・ネイポルズ(Courtney Napoles)さんの仕事術です。

Grammarlyは、Chromeの拡張機能で、膨大な単語使用例のデータベースの徹底分析に基づいて、英文のスペルと文法をチェックし、より適切な表現を提案する英文添削ソフトです。

コートニー・ネイポルズさんは、そのデータベースの分析に携わる1人で、コンピューターサイエンティストの博士号を持っているほか、編集者としてのバックグラウンドがあります。

彼女の仕事と専門知識、シングルマザーとしての朝のルーティン、伝統的なテキストエディターであるEmacsの愛すべき点について話を聞きました。

居住地:ニューヨーク市

現在の職業:Grammarlyの言語データ・マネージャー

現在のPC:13インチのMacBook Pro

現在の携帯端末:iPhone 8

仕事の仕方を一言で言うと:マルチタスク人間

── まず、略歴と現在の仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?

私は数年前に思い切って大きなキャリアチェンジをしたので、経歴はちょっとユニークです。

プリンストン大学で心理学の学士号を取得した後、業界誌の出版社で、実用書の編集をしていました。意外に聞こえるかもしれませんが、その仕事がきっかけで、ジョンズホプキンス大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得しようと思いました

今は、自然言語処理(NLP)を専門にしています。NLPとは、機械が人間の言語を理解するのを助けるさまざまな技術の総称で、私の仕事が毎日世界中の何百万人もの人々の役に立っていると思うとワクワクします

私がGrammarlyに最も魅力を感じる点は、ミッション指向であること、そしてコミュニケーションにとても力を入れていることです。

我が社は、人々のコミュニケーションを向上させることで生きやすい世の中にすることに専念しています。とてもモチベーションが上がる仕事です。

当初、私はリサーチサイエンティストとして採用されましたが、現在は言語データ・マネージャーとして、NLP、ディープラーニング、マシンラーニングのための言語リソースの作成と評価に携わる分析言語学者のチームの編成と管理をしています。

息子を抱くコーテニーさん
ジョンホプキンス大学卒業式で息子と一緒に

──最近の1日の流れを教えてください

シングルマザーの私の1日は、息子に学校に行く支度をさせることから始まります。 でも、慌ただしい朝のルーティンを始める前に、数分間2人でベッドの中で寄り添っておしゃべりします。

これをすると、気持ちを落ち着けて一緒に1日をスタートできます。息子とこのような思い出を作れる期間は限られているとわかっているので、こういう瞬間を大切に味わっています。

朝は特に忙しいので、激しくマルチタスキングしないとやるべきことを全部片づけることはできません。

息子がテレビを見ている間に、私は息子の朝食を作り、自分のコーヒーを淹れて、メールやSlackをチェックします。それから息子が放課後に食べるスナックを準備して、犬を散歩させ、息子と一緒に出かける準備をします。

オフィスに着く頃までに、シングルマザーのモードから仕事モードに入ります。

オフィスで最初にすることは、アメリカンコーヒーを飲みながら、チームと情報共有することです。

昼食後は、血流を良くして、プロジェクトの細部まで深堀できるという理由で、スタンディングデスクで立って仕事をすることが多いです。

1日の大部分は会議をしていますが、アルゴリズムでデータを評価する方法を新人たちに教えたり、次の研究プロジェクトのためのハイレベルのプランニングをしたり、新入社員の研修にできるだけ時間を割いています。

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

Emacsが無いと仕事では手足をもがれたも同然になるでしょう。Emacsは、コードを書くプログラムエンジニアやソフトウェアエンジニアに人気のパワフルなテキストエディターです。

私が使用するときは、「Org-mode」にして、ToDoリストの作成・優先順位の変更・メモの整理・必要な人たちのタグ付けをしています。

使い始めてまだ1年ですが、もう他のところにメモすることはできません。仕事だけでなく、私生活でも、買い物リスト・荷造りリスト・息子のサマーキャンプのスケジュール管理など、さまざまなことに使っています。

とても幅広く使えてパワフルです。とにかく、何にでも使えます!

3人の男女
コートニーさんとチーム

── 仕事場はどんな感じですか?

私は、Grammarlyのニューヨークオフィスではなく、WeWorkという素晴らしいスペースで仕事をしています。

自然光がさんさんと射し込み、座席は自由で、個室の会議室があります。私の席は窓際にあって、ニューヨーク大学病院に視界を遮られなければ、イーストリバーが見えるはずでした。

私のデスクは、スタンディングデスクにもなるタイプです(それで、昼食後はスタンディングデスクにして使っています)。

個人的なワークスペースには自然光と植物がたっぷりある上に、エルゴノミクスキーボードもあって、プログラミングするときとても助かっています。

でも、大きな音を立ててタイプしないようにしています。わざとやっているのかと言われたことがあるので。あとは、外付けモニター・付箋・リーガルパッド・ペンがたくさんあります。

Paper Mate Flairのペンが気に入っています。仕事ではあまり紙とペンを使うことはありませんが、デスクのそばにペンがあることが好きなんです。上質なフェルトペンで書くと精神的にとても癒されます。

── お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?

一般に、ワークスペースやデスクトップを最適化する方法があれば、試してみることにしています。ただ、とても意識的に使っている時間節約術が2つあります。

1つは、できるだけマウスを使わないようにすることです。特定のコマンドやアクションをキーでカスタマイズするキーボードマッピングを使うと、作業速度が速くなることに気づきました。

ですから、毎日する動作は全部ショートカットをつくって、余分なステップをたくさん省いています。

それから、SizeUpもかなりの頻度で使っています。開いているウィンドウのサイズと位置をスクリーンに応じてすばやく最適化してくれるからです。

おかげで、タブの切り替えをしなくていいので、時間を節約できますし、フラストレーションもなくなります。私の仕事は、大量のデータの塊をいくつも比較分析しなければならないので、これは特に重要です。

このツールのおかげで、データの塊をいくつも並べて視覚化することができます。

── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっていますか?

Grammarlyでの私のキャリアの大部分を共に歩んでくれたサンフランシスコのオフィスにいる同僚です。

私たちは直接一緒に仕事をするわけではありませんが、1年半前に知り合い、テック業界のワーキングマザーという共通点で絆ができました。彼女と出会ってから、2週間に一度はビデオ会議をして、仕事のチャンスや課題についてよく話をしています

同じような目標を持った同志から、こうしたサポートを得られるので、私は自分の仕事の状況を正しくとらえることができています。彼女は私とはまるで違う視点を持っているからです。

人を助けることも、私たち2人が共有している信条で、そこでも結びついています。そのせいか、チーム内では時に失われてしまう深い共感を、彼女と会話していると感じられます。

彼女と話すと、私は自信が出てきて、悩みの種になったり仕事の障害になる「考え過ぎ」をコントロールしようと思えます。

窓際のデスク
コートニーさんの仕事場

──どのように充電したり休憩していますか?

忙しい日の合間に、外に出てオフィスの近くにあるお気に入りの公園まで歩くことで充電しています。十分とは言えませんが、毎回公園を一周するだけですぐに元気になります。

──今、何を読んでいますか? おすすめの本はありますか?

今年は、仕事の役割においてさまざまな変化がありました。

新しいチームのリーダーになり、チームを作る仕事になりました。それから、ニューヨーク市のオフィスのサイトリーダーにもなったので、マネジメントとリーダーシップのスキルを習得するという新しい課題に挑戦することにもなりました。

現状に後れを取らないために、Julie Zhuo著『The Making of a Manager』を読んでいます。最近2人の社員を採用して新人研修をしているのですが、こうしたところに応用できています。

──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

満足できない体験をしたり、状況に不満がある場合は、他人に目を向ける前に、まず自分を顧みるべきです。

そうすれば、最初に自分の視点で問題を解釈できるので、自力で問題を解決できるか、少なくとも、問題を解決するために何を変える必要があるか認識できる可能性が高くなります。

垂れ幕の前に座る3人の女性
Women Impact Techに参加するコートニーさん

──挑戦中の課題はありますか?

Grammarlyは、文章の間違いを直す文法添削ソフトとして評判を得ましたが、実際には、それよりはるかに幅広いサポートを提供しており、常に向上しています。

我が社は、ユーザーが文法に自信を持つ助けになるだけでなく、コミュニケーションをサポートする方法も拡大していきたいと思っています。

ユーザーがより明瞭で効果的な文書を書けるように支援すること、最終的には、ユーザーが自分の言いたいことを伝えて理解してもらえるようにすることを目指してリサーチを続けています。

このような人的目標を持つエンジニアリング製品の開発は、容易ではありません。

Grammarlyは、文法に基づいたディープラーニングとマシンラーニングのアプローチの組み合わせであるAIによって強化されています。こうした方法の中には膨大なデータを要するものもあります。つまり、数千から数百万もの注釈無しのデータから学習することに依存しているのです。

私は、AIモデルのトレーニング用にこうした大規模なデータベースを作るチームのリーダーをしています。品質と利用可能なリソースの折り合いをどのようにつけるかが永遠の課題です。

我が社は、質の高いデータ、特に言語にバイアスが入ることがないデータに強いこだわりを持っています。

リサーチエンジニアには、私のチームが作るデータを使って期待通りのモデルを作って欲しいので、私はリサーチエンジニアと非常に密に仕事をしています。とはいえ、すべてアジャイル・フレームワークで作業しています。

さらに、私はグローバルチームも編成しているので(既に私が入社した頃の2倍の大きさになっています)、複数のタイムゾーンと大陸をまたいで緊密なコラボレーションと人間関係を維持することに日々注力する必要があります。

同時に、幅広いスキル(言語の専門知識、プロジェクト・マネジメント、コーディングのスキル、NLPの知識)を探求して、成長し続ける我が社の武器を増やしていかなければなりません。

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Source: Grammarly, Irradiated Software, Amazon

Nick Douglas – Lifehacker US[原文