Electronics

2019.07.16

東京大学とPreferred networksの研究者によって作られた木の枝が自走するロボット「Walk」

Text by Toshinao Ruike

それは地面を自走する木の枝。『ロボットや人工知能が人々の雇用を脅かす』『ロボットに負けない人間力を』そんな煽り文句が日本の経済誌の誌面を飾る昨今、意表を突くような革命的なロボット「Walk」が現れた。

東京大学とPreferred networksという企業の研究者によって開発されたこのロボットはArduino Megaを搭載し、ディープ・ニューラルネットワークを活用した深層強化学習によるシミュレーションによって得られたデータを使って歩くが、しかしそれはただの木の枝だ。

適当に枝を拾って重さを量り、3Dスキャンを行い、コンピューター上でシミュレーションを重ねる。

できるだけ遠くまで効率的に移動できる方法を評価するが、上の図のような姿勢をロボットが取った場合は、好ましくない姿勢として低い評価が与えられる。見た目だけでものを言うなら、技術力のない人向けロボットコンテスト「ヘボコン」のようだ。自然の造形を使ってロボットにしてしまう、これはこれ以上デザイン的に無造作にはならないという意味でも、我々が昨今目にするスマートなロボットのイメージから最もかけ離れた極端な例と言えるだろう。

開発者の前川和純氏のHPによると、これまでのロボットがデザイナーによって機械としての機能性が決定されていた「トップダウン型」であったのに対して、このロボットは見つけた素材全体をどのように機能させられるかを考えてロボットを作り始める「ボトムアップ型」である点が特徴的であるという。

研究の狙いや現在から見た実用的な可能性はさておき、AIやロボティクスを微塵も解さない経済誌の読者が木の枝に戦慄する日も近づいたのだ。拾った木の枝がロボットになるなら、近い将来トラックだろうが恐竜だろうが何でもロボット(の一部または全体)にトランスフォームするかもしれない。昭和の超合金ロボットのようなメカメカしいロボットは過去のものになった。