[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Cookie(クッキー)が役に立たないかもしれない未来が突然、現実のものとなりつつある。米DIGIDAYはオムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)のCEOであるスコット・ハゲドーン氏に、業界の現状とそれがメディアエージェンシーにどんな意味を持っているのか、話を聞いた。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Cookie(クッキー)のトラッキング使用を制限するGoogleの新しいツールのデビューを、マーケターもパブリッシャーも間近に控えている。
このGoogleによるアップデートは、Appleによるインテリジェント・トラッキング・プロトコル(Intelligent Tracking Protocol)のあとに続く形だ。ユーザーの行動をトラッキングすることがより難しくなることが予測されているなか、業界はそれに備えようとしている。
Googleのニュースの前に、米DIGIDAYはオムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)のCEOであるスコット・ハゲドーン氏に、業界の現状とそれがメディアエージェンシーにどんな意味を持っているのか、話を聞いた。
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――Appleによる変更と、今後出てくるであろうGoogleによる変更について話をしたい。
ITPと2.2に対してAppleが加えた変更によって、DMPはほとんど役に立たないものになろうとしている。もしもChromeとAndroidドが同じ方向性に向かった場合、そして実際にその方向に傾いているように見えるのだが、GoogleもITPタイプのソリューションを用意していた場合、Cookieの80%ほどは根絶されるだろう。アドビ(Adobe)やオラクル(Oracle)のブルーカイ(BlueKai)といったサードパーティによるDMPを使ってトレーディングが自分でできると信じているクライアントにとっては、これらの投資のすべてが突然まったくの無駄になってしまう。すべてのトレーディングがCookieベースのソリューションで行われているなかで、Cookieがなくなってしまった場合、500万ドル(約5.5億円)のソフトウェアを買うといった5年に及ぶ減価償却プランや、それを長期に渡るビジネス・ケースに割り当てていくことは実行不可能になる。
――プログラマティックを社内で運営するように言われてきたブランドたちにとっては、現状のなかでこういった投資はさらに困難になる可能性があるということか。
ブランドのなかには、トレーディングにはフルタイムのスタッフが必要ではないと信じ込まされたところもある。コンバージョンを生むシグナルに合わせて設定をすれば、あとは放って置くことができる、といった具合だ。しかしそれはマーベル(Marvel)のアベンジャーズ(Avengers)の映画のように、人口を50%へと最適化するようなものだ。(アベンジャーズにおける悪役の)サノスが指をパチンと鳴らして、50%の存在が消えてしまう、という。(広告業界において)それは目にしてきた。
――現状において、アクシオム(Acxiom)やエプシロン(Epsilon)の投資はどうか。
これらの投資がふたつとも、ITPの時代において長期的に支払いができるのか興味がある。
――いま起きていることを、あなたはどのように特徴づけるか。
我々はクッキーが緩やかに死ぬことを待ち望んでいたが、それが突然非常に早く起きてしまっている。それが本質だ。これは5月初旬に突然開始された。しかし、これからITPの時代において、エプシロンとアクシオムに投資をすることが何を意味しているのか、誰もそれを見られていない。
――メディアエージェンシーにとっては何を意味しているのか。
それを直すためのソリューションを、囲い込みを行っているプラットフォームが提出している状態だ。クライアントの代わりに我々が複数のソリューションを実行するということになるかもしれない。状況に乗り遅れないため、我々の環境のなかで行っているのはそれだ。結局のところ、エプシロンやアクシオムといったサードパーティーのプラットフォームにデータが流出してことを防ごうと、彼らはしているのだ。
――これらの変更はすべて、プライバシーにフォーカスが集まったことによる。このような形でプライバシー問題に消費者たちが注目を向けると、メディアエージェンシーの仕事の内容は変わるのか。
業界の皆が、中央システムがあり、そこに複数のDSPやエコシステムとつながるDMPが存在する、という形に向かって突き進んでいた。行動をベースにしたメディアの将来、広告の将来はそうなる予定だった。そしてプライバシーに関するバックラッシュが生まれ、人々は「私がこっちのスクリーンで見ていたのに、一体どうしてそっちのスクリーンも私だって分かるのか? 私のデータはどうやって利用されてるのか?」と、疑問を口にした。
――もっとも影響を受けるマーケターたちは誰か。
eコマースのバックボーンを持っておらず、プロキシーKPIといったものを今後のコンバージョンポイントとして考えているようなクライアントは、もっとも影響を受ける。eコマースベースのデータではなく、クリックベースのプロキシを使った将来の結果予想のためのモデルを持っていた、製薬会社のクライアントや自動車会社のクライアントはもっとも影響が大きくなっている。
Kristina Monllos(原文 / 訳:塚本 紺)