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レッドハット、IBMによる買収後も“ブレない”新戦略 「オープンハイブリッドクラウド」注力、パートナー関係も維持

» 2019年04月24日 20時53分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「米IBM傘下になっても、市場を見ながらオープンソースを提案していく方針は全く変わらない」――。レッドハットの望月弘一社長は、4月24日に開いた2019年4月〜20年3月期の戦略発表会でこう強調した。

 親会社の米Red Hatは18年10月、米IBMに340億ドル(約3兆8000億円)に買収されると発表。業界に衝撃を与えた。日本法人もIBM傘下に入ることとなるが、新年度も従来の方針を曲げず、「オープンハイブリッドクラウドでIT業界を変える」をテーマに掲げて事業を展開する。

【更新:2019年4月25日午後5時10分 米IBMによる米Red Hatの買収に関する表記を一部修正しました。】

photo レッドハットの望月弘一社長

オープンハイブリッドクラウドとは

 レッドハットが推進するオープンハイブリッドクラウドとは、同社主導で開発するオープンソースソフトウェア(OSS)を取り入れたクラウド環境を指す。具体的には、コンテナ技術を活用したアプリケーションの開発環境などを提供する「Red Hat OpenShift」、ハイブリッドクラウド環境向けのIaaSなど、ITインフラ機能を幅広く提供する「Red Hat OpanStack Platform」の両プラットフォームを活用する。

 一般的なハイブリッドクラウド環境では、オンプレミスの物理マシン、プライベートクラウド、パブリッククラウドを構成しているソフトウェアの仕様がそれぞれ異なり、運用管理に支障が出るケースがある。これを防ぐため、Red Hat OpenShiftやRed Hat OpenStackなど互換性の高いOSS群を活用し、柔軟な運用を可能にするというわけだ。

 レッドハットは数年前からオープンハイブリッドクラウドの普及に注力。その結果、18年4月〜19年3月期は「Red Hat OpenStackの導入は前年度比2.3倍で進捗した。Red Hat OpenShiftは多くの金融機関やサービス産業で導入されている」(望月社長)という。

photo レッドハットの“オープンハイブリッド戦略”

今期の注力分野は?

 今期はこの戦略を推進する上で、「Red Hat Enterprise Linux for SAP HANA」「Microsoft SQL Server on Red Hat Enterprise Linux」など、他社製品との連携を引き続き重視。IBM傘下になってもパートナー各社との連携は継続し、顧客企業がハイブリッドクラウド環境下で多様なシステムを稼働できるよう支援する。

 この他、クラウドアプリケーションの構築支援や、AI(人工知能)を活用した保守・運用の自動化サービスも強化。クラウド化が遅れている企業や、人員不足や担当者のスキル不足によって自動化への対応に苦慮している企業に提供していく。

photo パートナー各社との連携は継続する

「IBMグループになっても当社の独立性は維持される」

 レッドハットは同日、富士通と協業し、7月にRed Hat OpenShiftのマネージドサービス(管理の一括請負)をリリースすることや、NECと協業し、付加価値の高い自動化システムの構築を目指すことも発表した。

 望月社長は「IBMグループになっても当社の独立性は維持され、オープンソースの価値はなくならない。当社のメッセージを、多くのパートナーは理解してくれる」と語り、パートナー戦略においても方針を曲げない意志を示した。

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