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経産省、国内の技術者支援しブロックチェーンのコア開発への参入促す

平成30年度産業技術調査事業の調査報告を公開

(Image: Shutterstock.com)

 経済産業省は4月23日、平成30年度産業技術調査事業の調査報告を公開した。同事業は、国内外の人材流動化促進や研究成果の信頼性確保等に向けた大学・研究機関へのブロックチェーン技術の適用及びその標準獲得に関する調査を行うもの。「学位・履修履歴証明」及び「研究データの信頼性の担保」の2テーマにおけるブロックチェーン技術の可能性及び国際的な標準化の取組ついて、勉強会による検討と公開型のハッカソンを通じた調査結果を報告した。

 報告において経産省は、BitcoinやEthereumなどの主要なパブリックブロックチェーンの技術要件策定について、日本の発言力を高める必要があるとした。それらのコア開発への国内技術者の参入を後押しするため、国内の技術者コミュニティが世界のブロックチェーン開発コミュニティに対して貢献しやすくなる環境作りを今後も推進する考えを示した。

 本稿では、経産省による調査から、その結論について紹介する。弊誌では今回報告されたハッカソンについて、記事『経済産業省開催「ブロックチェーンハッカソン2019」レポート前編後編』にて特集しているので、合わせてご確認いただきたい。また、同省のWebサイト上に調査結果の全文および概要が掲載されている。検討会の詳細など、報告の全容についてはそちらをご確認いただきたい。

 ブロックチェーン技術は、欧州における個人情報保護規則の整備などの動きと連動し、社会システムを大きく変容させる可能性がある。今回の調査で実施したハッカソンでは、想定を上回る規模の参加があったという。経産省は、インターネットの普及になぞらえて、ブロックチェーンもまた「今後爆発的に普及する技術の萌芽期」を迎えている可能性があるとした。一方、ハッカソンの開催によって、技術・経済・制度の3側面から社会実装に向けて解決すべき課題が見えてきたという。


    社会実装に向けてブロックチェーン技術が克服するべき課題
  • 技術面
    (1)秘密鍵の安全な管理・利用の方法、(2)そもそものデータを入力する際の信頼性の確保の方法
  • 経済面
    (1)高いUXの実現、(2)ブロックチェーン技術利用の必然性、(3)マネタイズモデル
  • 制度面
    (1)プライバシーの保護、(2)知る権利や忘れられる権利との整合性

 「学位・履修履歴・職歴管理」と「研究データの信頼性確保」の2つのテーマについてブロックチェーン技術適用の可能性を検討したところ、海外では複数の適用事例が生まれてきていることが明らかとなった。こうした動きに追随するため、行政と民間が連携して実証実験を実施できる環境を整備すること、国内の技術者コミュニティを支援し、ブロックチェーン技術の標準化に貢献できる環境を整備することが必要であると経産省は報告した。

 技術仕様の策定など、今後のブロックチェーン技術の標準化について、経産省は見解を示した。ブロックチェーン技術の標準化は、国際標準化団体による標準化の他、BitcoinにおけるBIP、EthereumにおけるEIP・ERCのように開発者とコミュニティによる民間主導の標準化プロセスが存在する。この両者を注視することが必要であるとした。

国際標準化団体によるブロックチェーン関連の標準化の一例

 現状、BitcoinやEthereumなどの主要なパブリックブロックチェーンのコア開発において、日本の発言権は大きくない。今後、貢献度を上げることで、標準化そのものに対する影響だけではなく、実際世界中で使われていくブロックチェーン技術において影響力を高められるという。

 経産省は今回の調査を経て、さらなるハッカソンの開催やオープンソース開発環境の強化、ブロックチェーン技術教育など、国内の技術者コミュニティが世界のブロックチェーン開発コミュニティに対してより容易に貢献できるようなきっかけの提供が今後必要であるとした。また、ISOやW3Cといった国際標準化団体と、EIPやBIPなどの民間標準化プロセスにおける橋渡しの役割を官民連携で目指すという。