イベントレポート

AI・ビッグデータ・ブロックチェーンによる第四次産業革命とは?

FLOCの一般向け無料セミナーで学ぶ「教養としてのテクノロジー講座」

 ブロックチェーン総合スクール「FLOCブロックチェーン大学校」を運営する株式会社FLOCは4月16日、一般向けの無料セミナー「教養としてのテクノロジー講座」を開催した。我々の生活を激変させるといわれている「AI、IoT、ビッグデータ」と「ブロックチェーン」について、初心者にも理解できる分かりやすい解説で、それぞれの関係性を知ることができる教養講座を開いた。

 今回の講座は、3月に開催し好評だった人気講座の追加開催となる。4月16日以外にも、25日、27日と全3回の開催が決定している。講座は誰でも参加することができるが、Webにて事前登録が必要だ。

 「教養としてのテクノロジー講座」の講師を務めるのは、FLOCの森口亮氏。第四次産業革命の推進に必要不可欠な「AI、IoT、ビッグデータ」と「ブロックチェーン」について解説をする。それぞれの関係性を正しく知り、ビジネスに活かすヒントを探って欲しいと、講座の趣旨を説明する。講座のゴールは、「テクノロジー」という大きな波に乗るための道すじをイメージできることであるという。

講師は、FLOCの森口亮氏

キーワードは「激変」

 講座では、テクノロジーによって今後10年単位ぐらいでどのようなことが起こり得るかを考えていく。そのためにまずは「激変」をキーワードに、過去30年間、ちょうど平成の時代丸々の30年を振り返る。

日本とアメリカの経済力比較

 この30年間にテクノロジーによって激変をしたものの1つに森口氏は「経済力の激変」を挙げた。日本とアメリカの経済力がどのように変化してきたかを見てみると、50年以上前はアメリカが世界のトップだったという。主たる産業は、自動車産業。それが平成元年(1991年)になると、日本の高度経済成長期の時期に重なり、世界経済のトップは圧倒的に日本だったという。当時、最も時価総額の高い会社はNTTで、約23兆円という評価額。世界の時価総額ランキング上位10社のうち7社が日本企業だったというのだ。50社で見ても32社がランクインをしていたという。

 ところが直近(2018年)のランキングを見ると、時価総額ランキング上位10社に日本企業は1社も入っていないそうだ。過去30年間のテクノロジーの変化で、ガラッと変わってしまったという。現在のトップ10社は、アメリカの企業が8社、中国の企業が2社。トップには、AppleやAmazon、Alphabet(Googleの持ち株会社)、Microsoft、Facebookというおなじみの会社がランクインしている。今風の言葉でいうとGAFAだ。アメリカ企業以外でかろうじて7位、8位に入った中国企業は、アリババとテンセント。こちらもおなじみのIT企業。ちなみに日本企業は上位50社中41位にトヨタ自動車がランクイン、たった1社といった状況とのこと。このように経済力の激変は、インターネットというテクノロジーによって起きたことが明白であると森口氏は解説する。

時価総額ランキング比較

 また、30年前はまだインターネットが存在しなかったという森口氏。今となっては当時どうやって生活をしていたのか不思議なぐらい、今は世の中にインターネットは浸透しているが、それは2007年に登場したスマートフォン(初代iPhone)の影響が大きいという。そこからテレビよりも動画サイトを見る、音楽はCDではなくダウンロード購入する、オンラインで買い物をするなど、テクノロジーによって「デジタルライフの激変」が起きたことは、周知の事実であり、誰もが実感しているところであろうと森口氏は語る。

 そして森口氏は3つ目の激変に「仕事の激変」を挙げた。テクノロジーが進化したことにより、なくなっていく職業がかなり増えてきているという。

 例えば工場では、人間よりもロボットの方が効率が良く、製造ラインでは人間に取って代わりロボットが稼働している例も少なくないという。自動車工場では、昔は人間が組み立てを行っていたパートをほとんどロボットがやっているという例を紹介する。また駅の改札の自動化や会社の受け付けのロボット化、IT化などを実例に挙げ、それぞれテクノロジーが人間に取って代わっていることを報告する。

 過去30年を見ても分かるように、テクノロジーは生活や仕事のみならずいろいろなものを変えていくものであると、森口氏は語る。これからもテクノロジーは進化し続け、それにより我々の生活はさらに変わり、また、なくなっていく仕事もより増えるだろうという。だからこそ、我々はテクノロジーについての教養を深める必要があるのだと、この講座の趣旨を改めて告げた。

そして、今後の10年

 そして数あるテクノロジーの中で、今後より重要になっていくだろうテクノロジーとして「ヒッグデータ」「AI」「ブロックチェーン」の3つを挙げた。これらは今後10年、さらに社会に「激変」をもたらすカギとなるテクノロジーであるという。また単体でというよりは、それぞれを組み合わせることで、より重要なテクノロジーになるだろうと森口氏は語る。

 森口氏は、「ビッグデータ」は一般的なデータ管理・処理ソフトで扱うことが困難なほど巨大で複雑なデータの集合を表す用語であるという。具体的には、販売データや在庫データ、アンケートによって収集されるデータ、顧客情報など、基本的に企業がコンピューターで管理をすることができる構造化データと、Web等のアクセスログやSNS等に大量にアップロード(投稿)される情報など一般企業が管理することが難しい非構造化データなどを含めた膨大なデータを収集し、これらを分析し、さまざまなものにデータを生かしていこうという取り組み全体のことを「ビッグデータ」と呼んでいると、解説をする。

 「ビッグデータ」は、企業のあり方や行動を根底から変えるテクノロジーになるといわれているそうだ。

 たとえばTwitterを例に挙げると、現在Twitterは1日に世界中で2億5000万件つぶやかれているが、Twitterは毎日8テラバイト(8192ギガバイト)のデータを処理している状況だという。Facebookは約25億件500テラバイト、Googleはさらに大きく24ペタバイト(24576テラバイト)のデータをそれぞれ処理しながら仕事を続けているという。これらのデータは年率40%以上で増加し続けており、2020年には35ゼタバイト(約35兆ギガバイト)までに膨らむだろうといわれているそうだ。ちなみに35ゼタバイトの9割以上は非構造化データであるという。こういったデータを分析し、それをマーケティングや商品開発に生かしている企業が多く誕生している中で、今までと同じやり方で大丈夫なのか? ということを知ってほしいと森口氏はいう。

 「ビッグデータ」においては、「テキストマイニング」という技術が出てきているとのこと。テキストマイニングは、定型化されていない文章の集まり、単語、フレーズの相関関係を分析し、何か生かせる形にする技術だという。これを使い、SNS等の生の声から実際に役立つ情報を抽出していくことで、より的確な消費者のニーズを把握することが可能になるだろうといわれているそうだ。

 続いて「AI」の解説に移る。「AI」は、人工的にコンピューター上などで人間と同様の知識を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指すものだという。

 「AI」は、できることによって4つのレベルに分かれているという。最もレベルの低いレベル1は、いわれたことだけをやるもの。例えばエアコンの制御等がそれにあたるという。温度が高ければ下げる、低ければ上げるというようなもの、これも一種の「AI」だという。レベル2は、ルールを理解して自分で判断できるものとのこと。ルンバなど自動掃除機などはそれにあたるという。部屋の形に沿って動き、ゴミがあれば吸い込むなど、ルールに則ることが可能なものだそうだ。

 さらに高度なレベル3の「AI」は、ルールを改善して、より良い判断ができるものだという。ある程度のサンプルか、自ら答えを導き出すことができるそうだ。検索エンジンや異常検知プログラムがそれにあたる。例えば、Google検索を実行したときに、キーワードを間違えて入力したときに「もしかし○○ですか?」と正しいキーワードに導かれることや、関連の情報を教えてくれることがあるが、あれも「AI」だという。みんなの検索結果から間違いやすいキーワードを学習し、正しいキーワードに導くようになるものとのこと。

 レベル4の「AI」は、自分で判断基準を設計し、自ら判断ができるという。レベル4ではいろいろなことができるようになるが、主な利用方法に外観検査や異常予測があるという。これは、自動車の自動運転も含まれるそうだ。

 またレベル1、2とレベル3、4には決定的な違いがあるという。それは、自ら学習をするかしないかだそうだ。我々は犬や猫の写真を見たとき、どんな種類の犬や猫の写真でも瞬時に犬か猫かを判断ができるが、これは我々の脳の中でこれまでの学習経験から推測を行い、判断をしているものだという。「AI」もまた推測をするために学習をしていく技術に発展しているという。「AI」も人間と同様に正しい答えを導き出すために、知識や経験が必要というわけだ。

 「AI」の学習方法の1つに機械学習という方法があるそうだ。さまざまなデータと共に、猫の特徴はこれ、犬の特徴はこれ、というように教えていくことで、正しい答えを導き出していくのが、機械学習とのこと。現在は、この機械学習をさらに発展させた深層学習(ディープラーニング)という技術も出てきているという。我々の脳内で行われているのは、ディープラーニングとのこと。ディープラーニングによって、犬や猫が判断できるとのこと。

 「ディープラーニング」は、人間の脳の仕組みを真似した学習モデルだそうだ。我々の脳機能の特性に類似する数理的モデルであるニューラルネットワークという仕組みを使い、人間と同じように学習経験をもとに、自ら考え、その判断軸すら自分で作り出していくことができるという。そして「ディープラーニング」は多層化することで、人間が扱えないような情報量を処理することができるようになり、人間を超えるような可能性を作り出しているのが、現在の「AI」だという。

ビッグデータとAIを生かすブロックチェーン

 将来、最も重要なテクノロジーの3つ目は「ブロックチェーン」だ。

 森口氏は、「ブロックチェーン」を簡単に説明をすると、変更、削除、改ざんができず、ダウンすることのない、正しい情報のみ記録されるネットワーク型のデータベースというようにまとめた。詳細は講座の後半で説明するが、まずはそういうものだと思っていただきたいと解説をする。これまでのサービスやデータベースは、企業などが管理をするサーバーにアクセスをする中央集権型のネットワークだったという。それが「ブロックチェーン」の登場によって、中央に管理者がいない分散管理型に代わり、これが未来のサービス、データベースの主役になるというのだ。

 もう少しだけ解説をすると「ブロックチェーン」の分散管理型データベースは、ネットワークに参加している人たちが共通したデータをみんなで持ち合って管理をしているというのだ。みんなで共通のデータをリアルタイムで管理していけば、たとえばどれか1つコンピューターが壊れたとしても、全体のデータがダウンすることはない。データは、データを暗号化したブロックを作り、さらにそれを暗号化して新しいブロックにつなげていきながらデータを記録していくという仕組みになっているという。

 これはどういうことが起きているかというと、すべてのデータが暗号化されたフロックによってつながっているため、過去のデータを改ざんすると、暗号化されたブロックのつながりにつじつまが合わなくなり、改ざんしたことがばれてしまうため、改ざんが極めて難しいというのだ。誰か1人がインチキをしてブロックを改ざんしても、みんなで共通のデータを管理していることから、他のコンピューターのデータともつじつまが合わず、インチキも無効化されてしまうという。ちなみにここではさらっとブロックチェーンの説明をしているが、まずはそのようなイメージであるということにとどめておいてほしいという。実際はブロックチェーンの仕組みはかなり複雑なので、まずは概要を知っておくことが重要とのこと。

 「ブロックチェーン」というと、これまでは仮想通貨のイメージが強く、仮想通貨は怖いとか、怪しいというイメージが先行しているが、現在は、この「ブロックチェーン」の技術自体が注目されつつあるという。

 インターネットは、登場時「情報革命」といわれたという。インターネット登場以前は、手紙や宅配便など物理的に送ることしかできなかった情報を、すべて電子化し、それを世界中に瞬時にほぼコストをかけずに送ることができるようになったことで、そう呼ばれたというのだ。しかし「ブロックチェーン」は、それ以上の革命になるだろうといわれているという。それは「ブロックチェーン」は情報だけではなく、経済的な価値をも世界中に瞬時にほぼコストをかけずに送れるようになったからだという。

経済的な価値が送れるということはどういうこと?

 ここで森口氏は、「ブロックチェーン」の実例を紹介する。

 ドイツの自動車メーカーBMWは、電気自動車のデータ管理に「ブロックチェーン」を使用しているという。変更、削除、改ざんができない「ブロックチェーン」の特徴を生かし、車の走行履歴、カーナビデータ、EVの充電履歴、車の流通経路情報等を「ブロックチェーン」に記録しているそうだ。

 これによって何ができるかというと、正規品である証明ができるという。また中古車市場においては、日本でも修理履歴を改ざんする事件が起きているが、修理履歴をブロックチェーンで管理することで、そういうことができなくなるというのだ。それにより車の価値は保たれ、これまではディーラー等プロしか証明することができなかった車の価値を誰でも管理・証明ができるようなるとのこと。これが一般化すれば、個人間での車の取引も可能になる時代もくるのではないかというのだ。

 ここまで将来の重要なテクノロジーとして、「ビッグデータ」「AI」「ブロックチェーン」を紹介してきたが、前述の2つはソフトウェアであり、「ブロックチェーン」はデータベースであると森口氏はいう。

 「ビッグデータ」も「AI」もものすごく重要なテクノロジーだが、「ブロックチェーン」と掛け合わせることで、さらに大きな可能性が作られていくものになるという。ソフトウェアのためのインフラのようなポジションに「ブロックチェーン」はなっていくだろうというのだ。そしてその関係性は「ブロックチェーン」はiPhoneで、「ビッグデータ」と「AI」はアプリのようなものと考えるとわかりやすいという。森口氏は、教養としてのテクノロジーで一番大切なテクノロジーは「ブロックチェーン」であると考えているそうだ。そして「ブロックチェーン」はまだまだ進化していくだろうという。iPhoneが進化することでより高度なアプリが誕生したように、「ブロックチェーン」の進化と共に、さらに応用できる範囲は広がり、新たな可能性も生まれるだろうとまとめた。

講座はさらに続くが……

 そして森口氏の「教養としてのテクノロジー講座」は、ポルシェの取り組む「ブロックチェーン」の事例や「ブロックチェーン」による著作権やロイヤリティ決済の仕組みといった具体的な事例紹介となり、最後に、より詳細なブロックチェーンの解説へと続いた。特にブロックチェーンの解説については、まったく知識のない初心者にも分かるように、広場で石板に文字を彫る人、それを見守る民衆というような巧みなたとえ話で、解説が行われた。一般教養として、しっかりと「ブロックチェーン」が身につく内容だった。

 解説については詳細を報告したいところだが、本講座はあと2回開催される予定になっており、また本講座は人気があるということから、再々開催もないとも限らないので(あくまでも筆者の推測)詳細についてはネタバレになってしまうので控えたいと思う。

 なお、本講座は「ブロックチェーン」を本格的に学んでみたいという人に向けたブロックチェーン総合スクール「FLOCブロックチェーン大学校」による一般向けの無料セミナーである。セミナーを受けて、自分が「ブロックチェーン」の何を学びたいのか、どのような学習方法があるのかなどを知ることもできるので、ブロックチェーンに興味がある人、スキルアップを考えている人は、一度受講されてみてはいかがだろう。

高橋ピョン太