仕事の効率化や生産性を向上させるハック術を紹介しているライフハッカー。にもかかわらず、編集部の「働き方改革」は、まだ道半ば。正直、課題も少なくありません。

そんな状況を打破すべく、新たなITツールを約1カ月半にわたり導入して、課題解決につながるのか検証してみました。そのツールとは、日本マイクロソフトの「Surface」シリーズと「Microsoft 365」です。

【Microsoft 365】Microsoft Officeのサブスクリプション版の「Office 365」と最新のWindows OS「Windows 10」、IDやデバイスの管理や情報を保護する「Enterprise Mobility+Security」を組み合わせたソリューションです。

ここでは、これらのITツールを活用した編集部の働き方改革を振り返りながら、その成果を編集長の松葉が、ライフハッカーで「仕事効率化」をテーマに連載執筆中の伊庭正康(いば まさやす)さんに報告。感想とアドバイスを伺いました。

課題1. コミュニケーションを活性化・効率化するには?

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Photo: 柳原久子

1つ目の課題は「コミュニケーション」。編集部では、リモートワークを推進していますが、コミュニケーションの希薄化という弊害も発生しています。また、従来のチャットツールだけでは、やりとりが終わらないこともあり、無駄な作業が発生するなど、非効率さが問題でした。そこで活用したのが、Office 365のコラボレーションハブとなる「Microsoft Teams(以下、Teams)」です。

【Microsoft Teams】チャットとオンライン会議を円滑に行うための機能を装備したアプリ。個人間やチーム間のチャット、オンライン(音声・ビデオ・ウェブ)会議の招集と開催、ファイルの共有(容量を問わないのもポイント)、Office 365アプリで作成したファイルの閲覧や編集、共有が可能です。

松葉:Teamsを使って感じたのは、それ1つでコミュニケーションが完結する便利さです。僕と編集部員の間で最も多いコミュニケーションは、原稿の確認。Teamsは、WordやExcel、PowerPointなどのファイルをそのまま開けるので、別途でアプリを起動したり、メールに添付して送信する必要がありません。確認・返信のレスポンスが速くなり、効率化につながりました。

また、オンライン会議の日時設定やメンバー招集が簡単にでき、設定した日時の前にリマインドを招待者全員に通知してくれるのも便利ですね。会議には浜松在住の部員も参加しましたが、顔が見えるので違和感がなく、逆に全員の参加意識が高まったのか、活発な意見が飛び交うなどコミュニケーションの観点では導入したメリットを感じました。

ちなみに、オンライン会議をするとき、自宅を見られたくない人や周囲の人が映りこむ場合に、背景をぼかす機能があります。浜松在住の部員は、コワーキングスペースで作業することが多いので役立ったようです。

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Teamsは、ナレッジを蓄積するwikiなどタブの追加も可能。また、PCだけでなく、スマホやタブレット用もあり、同期が可能です。
image: 日本マイクロソフト

伊庭:編集部の課題と同じように、働き方改革による残業抑制やリモートワークの推奨で、現場ではコミュニケーションを取りづらくなったという声があります。一方で、メンバーから新しいアイデアを出してもらうには、上司と部下、メンバー同士の密なコミュニケーションは欠かせません。ただ、今の管理職は90%以上がプレイングマネージャー。とにかく時間がない。そういった状況では、Teamsは非常に有効なツールとなります。

たとえば、オンライン会議のコミュニケーションでは、表情や言葉の行間を読み取ることができます。その雰囲気から課題が汲み取れたら、それを聞き出し、メンバーがチャットで解決方法を探すといった使い方もできます。顔が見えるコミュニケーションと知恵の出し合いがチームワークにつながるのではないでしょうか。

ただし、誰もが意見を言える環境をつくるには、メンバー同士の関係性が重要です。その意味では、話しやすさが担保された環境整備も大切ですね。

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伊庭 正康 株式会社 らしさラボ 代表取締役。リクルートグループ入社。その後、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社 らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理など、年間200回以上の研修に登壇。近著に『仕事の速い人が絶対やらない段取りの仕方』などがある。
Photo: 香川博人

松葉:編集部員はパーソナリティーや立場がバラバラ。お互いを理解して関係性を深める場をつくるのは課題です。

伊庭:たとえば、Teamsの「Wiki」タブを活用して、皆さんのプロフィールや経歴をアップしておくのはどうでしょうか。大企業では入社年度や経歴、携わった仕事などを記した社内DBがあります。これの簡易版。人となりがわかるとコミュニケーションが深まるはずです。

松葉:おもしろそうですね。それぞれの得意分野などを書き込んでいけば、誰に相談すればよいかが的確になり、仕事を頼みやすくなるかもしれません。

課題2. より創造性・生産性を向上させるには?

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Photo: 柳原久子

2つ目の課題は、「クリエイティビティ」。よりおもしろく有用な企画を立て、たくさんの記事をつくるために、編集部全体、そして編集部員ひとりひとりが、どのように創造性を高め、生産性を向上していくか。常に追求すべき課題です。そこで活用してみたのが「Microsoft Whiteboard(以下、Whiteboard)」と「OneNote」。

【Microsoft Whiteboard】アイデア、コンテンツ、ユーザーを1カ所に集めることができる、フリーフォームのデジタルキャンバスアプリです。

【OneNote】キーボード入力や手書き、画像や動画の添付、音声録音などができる高機能なメモアプリです。

松葉:Whiteboardは、ブレストにうってつけでした。メンバー全員が手元のSurfaceで同じホワイトボードを共有。Surfaceペンで書き込んだ文字や図が瞬時に反映されるので、マインドマップを書くようにアイデアを膨らませることができます。キーボード入力とは異なり、サイズや色を変えながら手書きすることで、発想が自由になり、柔軟なアイデアが生まれるのも発見の1つでした。

OneNoteの役割は大きく2つありました。1つは個人用のメモです。アイデアや業務の進捗などをまとめ、必要があればTeamsに取り込んで共有しました。もう1つは、会議での議事録作成です。お恥ずかしいのですが、これまでの編集会議では、しっかりと議事録をとっていませんでした。

というのも、記事のネタやタスクは即決していたからです。再考する必要がある案件は、そのままボツになることも多かったですね。OneNoteにも、Whiteboardと同じ共有・編集機能があるので、編集部員が自分の意見などを書き込んでくことで、自動的に議事録を作成。企画の素を眠らせることなく、深掘りしたり、アイデアの源泉としても活用しています。

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OneNoteでWordファイルを読み込み、手書きで原稿チェックする松葉。「Surfaceペンを使うことで、単なる追記・修正依頼ではなく、赤字を入れたニュアンスまで伝えられる」と、雑誌編集者時代の作業を思い出したそうです。
Photo: 柳原久子

伊庭:Whiteboard とOneNoteは、使い分けたほうが創造性も生産性も高まると思います。

たとえば、編集会議でアイデアを出しながらセッションするのは、Whiteboardが向いています。手書きだと、思考をそのままアウトプットできるのがいいですね。それに、デジタルキャンパスには書く範囲に限りがないので、無限大にアイデアを広げられます。グルーピングもしやすいでしょう。

OneNoteは、ネタ帳として最強ですね。手書きやキーボード入力はもとより、メモができない状況でも、直接、写真撮影と保存、音声録音ができます。また、文字や図表でアイデアを概念化するのは、手書きの方が手軽にでき、画像などを組み合わせれば、想像力をかき立て新しい発想につながります。

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Photo: 香川博人

課題3. 時間に追われない、残業レスを推進するには?

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Photo: 柳原久子

3つ目の課題は、「時間の効率的な使い方」。リモートワークやフリーアドレスに取り組んでいる編集部ですが、メディアという特性上、締め切りに終われることも珍しくありません。

この課題を解決するためにも、編集部員が自分の仕事内容と時間配分を可視化し、作業を効率化するのは重要なこと。そこで活用したのが「Microsoft MyAnalytics(以下、MyAnalytics)」と「Power BI」です。

【Microsoft MyAnalytics】仕事の時間をどのように費やしたかを集計して分析してくれる、個人生産性分析ツールです。

【Power BI】Excelなどからデータを読み込んで図表化するツール。BIとは、Business Intelligenceの頭文字で、ビックデータを分析して、意思決定に活用する手法のことを言います。

松葉:MyAnalyticsは「Microsoft Outlook」をはじめとするクラウドサービスの利用状況から、作業内容を推測し、会議メールフォーカス(集中)残業の時間を割り出します。会議は内容まで分析され、残業時間に開催されたとか、会議中に別の作業をしていたことも表示可能。また、誰と多く連絡を取り合ったかなどもわかるようになっています。

自分では気がつかなかったのですが、会議を急に開いて人を集める癖があったようです。これでは、相手の予定に迷惑をかけてしまうので、意識してやめるようにしました。そして、頻繁に打ち合わせをしているメンバーが固定化されていたことにも驚きました。編集部員もメールの作業時間が長いことや残業の多い週が理解でき、仕事に集中できず時間を無駄にしていたことがわかるなど、新たな気づきが、業務改善に役立ったようです。

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image: ライフハッカー編集部

伊庭:タイムマネジメントが上手な人は、作業に必要な時間を把握しています。しかし、苦手な人でもMyAnalyticsを活用すれば、すぐに業務改善の効果が現れると思います。

MyAnalyticsの効果的な活用法は、課題のあぶり出し。たとえば、チーム全体の会議時間が月150時間だったとしたら、翌月は100時間に減らす目的を立てます。MyAnalyticsは、会議の傾向まで分析してくれるので、メールの時間が長い会議が多ければ、必要のないメンバーまで参加している可能性があることがわかります。同じように、残業時間やフォーカス時間を見直すことで、重要な仕事の質を向上させることも期待できます。

松葉:なるほど。参考にしてみます。業務改善では、Power BIを使うことで、作業時間の短縮に役立ちました。基本的には、読者属性やアンケートの分析、アクセス解析などに活用。読み込んだExcelデータなどをAIが内容を分析して、もっとも見やすい内容でグラフ化してくれます。グラフの種類や色を考えなくていいので、作成の作業時間が大幅に短縮できました。

編集部員と共有するときも、数字だけで見せるよりも、グラフの方が伝わりやすい。営業部門では予算の進捗管理といったリアルタイムで変化するデータ分析にも活用できそうです。

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image: ライフハッカー編集部

伊庭:確かに、予算管理は捗りそうですね。企業全体や部単位での予算は見ているかもしれませんが、これを使えばチーム単位でのマネジメントも可能です。数字を見ながら、「あと10%足りないけど何をする?」といった感じで、その都度、必要な施策が打てる。それに、視覚に訴えるのは重要で、数字でみるよりもモチベーションアップにつながります。

働き方改革にデバイスは重要なのか?

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Photo: 柳原久子

最後にSurfaceシリーズがどのように業務改善に役立ったのかをご紹介します。

今回、編集部では2-in-1の「Surface Pro 6」とラップトップの「Surface Laptop 2」を導入。作業環境に合った使いやすいモデルをそれぞれ選択しました。

松葉:実は僕、Macユーザーですが、今はSurfaceへの乗り換えを本気で考えています。地味に便利だったのは、指紋認証、顔認証に対応した「Windows Hello」のサインイン機能。特に顔認証は反応が速く、一瞬でロックが解除され、すぐに作業に入ることができます。

Surface Pro 6は、製品発表会やイベントなどの取材で利便性を実感しました。立って取材するときはタブレットモードにしてOneNoteで手書きメモ。一段落したら、タイプカバーを取り付けラップトップモードにして原稿を書くこともできました。

今回、SurfaceシリーズとMicrosoft 365を活用してわかったのは、多彩なツールを集約シームレスに連動させることで、組織や個人が抱えていた課題が解決へとつながり、効率化や生産性だけでなく、ストレスまで減ったこと。

伊庭さんは「TeamsやMyAnalyticsを活用して、情報を可視化、共有することで、個人や組織のビジョンやポリシーをしっかり浸透させることができる。それが、業務を効率化するだけでなく、仕事の価値やあり方自体も高まりさらに上を目指すモチベーションにもつながります」と語ります。

ライフハッカー編集部では、今回の課題と改善の試行錯誤を生かして、労働時間という数字だけでなく、ワーク・ライフ・バランスまで見据えた本質的な働き方を考えていきたいと思います。


Photo: 柳原久子 , 香川博人

image: 日本マイクロソフト , ライフハッカー編集部

Source: 日本マイクロソフト, Surface , Microsoft 365 , Microsoft Teams , Microsoft Whiteboard , OneNote , Microsoft MyAnalytics , Power BI , Microsoft Outlook , Surface Pro 6 , Surface Laptop 2 , Windows Hello