「敵の敵は、味方」マイクロソフトとアマゾンが提携、グーグルに対抗

サティア・ナデラ氏とジェフ・ベゾス氏

マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏とアマゾンCEOジェフ・ベゾス氏。

Chip Somodevilla / Staff

  • 10月12日(現地時間)、予想外の提携が発表された。マイクロソフトとアマゾンはオープンソースの開発者向けツール「Gluon」を提供する。
  • Gluonは、AIおよび機械学習システム開発を簡易化するツール。
  • しかし、この提携の重要なポイントは別にある。すなわち、これはAI分野で先行するグーグルに両社が協力して対抗するということだ。

マイクロソフトとアマゾンは、AIで手を組んだ。

両社は、開発者向けのツール「Gluon」をオープンソースで提供すると発表した。つまり、誰もが無料でこのツールを使ってシステムを開発、もしくはツールの機能開発などに参加することができる。

新たなプログラミングツールをオープンソースで公開するメリットは、ユーザーの要望をより確実に汲み取れる点にある。なぜなら、ツールの開発を行うのは、他ならぬユーザー自身だから。

しかし、今回の提携が反響を呼んでいる最大の理由は、別にある。

AIと機械学習は、マイクロソフトとアマゾンが長年にわたって独占してきたクラウドビジネスにおいて、次の大きな変化を生み出す可能性を秘めているからだ。

そしてAIと機械学習では、グーグルに一日の長がある。グーグルのクラウドコンピューティング戦略はAIを重視してきた。AIはクラウドにおいて極めて重要になると考えるグーグルは、持ち前の高いAI技術によって、一足飛びにアマゾンとマイクロソフトを追い越し、次のクラウド戦争に勝利しようと考えている。

「敵の敵は、味方」

グーグルは、すでに先行している。TensorFlowと呼ばれる、機械学習アプリケーションの開発を簡易化するオープンソースのツールを提供済み。もちろん無料だ。TensorFlowは開発者から高い支持を得ており、200万件以上のオープンソースプロジェクトが共有されているGitHubでは、5番目に人気(星の数による)のツールとなっている。

サンダー・ピチャイ氏

グーグルのCEOサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏。

Beck Diefenbach/Reuters

TensorFlowを使うためにグーグルのクラウドサービスを使う必要はない。アマゾンのクラウドサービスにも対応し、TensorFlowはそこでも人気がある。だが、TensorFlowを重用する開発者は、自ずとグーグルのクラウドサービスを利用する傾向がある。

もちろんアマゾンも、MXNetと呼ばれるTensorFlowと競合するツールを提供している。これは、顧客が好んで使用するツール類をサポートしつつ、同時に自社製品も提供し、いずれにしても収益につなげるというアマゾンのいつものやり方だ。

同様に、マイクロソフトもCNTK(Microsoft Cognitive Toolkit)というTensorFlowと競合するツールを提供している。

今回発表されたGluonの狙いは、MXNetとCNTKの使用、そして両ツールを連携させたプログラミングを簡素化すること。12日、MXNetバージョンのみが発表されたが、CNTKバージョンも近日公開される予定だ。

TensorFlowは人気が高いため、すでに「Kerasと呼ばれるツールがあり、これも高い人気を得ている。だから、MXNetとCNTKは、今回のことでTensorFlowと肩を並べるためのスタートを切れるかもしれない」とCrowdFlowerの創業者ルーカス・ビーワルド(Lukas Biewald)氏は語った。同社は、タスクを自動化できる部分と人的な介入が必要な部分を機械学習を用いて判断するアプリケーションの開発を支援するスタートアップだ。

Gluonによるマイクロソフトとアマゾンの提携は、いわゆる「敵の敵は、味方」というものだ。

「GluonはマイクロソフトとアマゾンがAIツールの分野で影響力を取り戻すための布石」と、あるプログラマーはHacker Newsに記した。

「両社は協力して、グーグルのツールに対抗しようとしている」

アマゾン「TensorFlowを愛している」

ジェフ・ベゾス氏

David Ryder/Getty Images

アマゾンのテクニカルエバンジェリスト、マット・ウッド(Matt Wood)氏は、アマゾンはグーグルのツールを終わらせようとしているわけではないと断言した。

「我々はTensorFlowを愛している(AWS上で数多くの開発者がTensorFlowを使っている)」と同氏はHacker Newsに記した

ウッド氏は「データベースと同様に、AWSは様々な開発ツールに対応している。Gluonなどの自社ツールをはじめ、PyTorchやTensorFlowのような、自社ツール以外のものも同様だ。すべて、最優先される。我々は内部的には、個別のプロジェクトに資金を投下しており、たとえ競合するツールであっても、AWSがこうした人気の高い開発ツールを運用するための、ベストな場所となるよう注力している」と続けた。

だが、アマゾンが人気の高いテクノロジーに対抗して、自社で競合製品を作ることには理由がある。自社のコントロールと取り分をより確保するためだ。

また、マイクロソフトとアマゾンは、他のAI分野でも協力体制を敷いている。8月、両社は音声AIアシスタントでの提携を発表、CortanaとAlexaを連携させると述べた

いずれにせよ、より使いやすいAIツールを目指す開発競争は、ビーワルド氏にとって歓迎すべきことだ。

「今は、開発に膨大な労力がかかる」とビーワルド氏。

「AIや機械学習が使いやすくなることは、当社にとって、そしてもちろん、すべての人にとって良いことだ」

[原文:Microsoft and Amazon struck a brilliant partnership to take on Google in the next big thing for cloud computing

(翻訳:忍足 亜輝)

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